セネガルのしたたかさにご用心-。日本代表は1次リーグ突破をかけ、24日にセネガル代表と対戦する。

 「テランガ(おもてなしの国)のライオン」の愛称で知られる相手は、したたかさと冷静さを持ち合わせる強敵だ。セネガル在住4年で、現地で「日本対セネガル非公式応援ソング」を制作したヒップホップMCで実業家のセネガル山田さん(30)に、セネガルの国民性やサッカー事情について聞いた。

 【おもてなしの国】 セネガルは「テランガ(おもてなし)の国」「ジャム(平和)の国」として知られている。山田さんによると、イスラム圏の国で、困っている人を助ける「喜捨の文化」に加え、セネガル人特有の優しさが融合しているからだという。治安もよく、旅行者は「最高だった」とセネガルを好きになって帰る。観光地として魅力満載だが実際に住むと「したたかさ」「冷静さ」と別の側面を実感したという。

 ビジネスとなると、時間を味方につけたタフなネゴシエーター(交渉人)。自分のペースをつくり、相手に主導権を握らせない。相手がしびれを切らすのをじっくり待つのだ。慎重で、リスクを極端に避ける一方で、自分の取り分の交渉となると、非常に大胆になる。どんな時も笑顔を絶やさず、人間関係の確執も、表に見えることはない。本当の関係性を知るのは当人同士のみ。強靱なメンタルもセネガル人の武器なのだ。

 ワールドカップのピッチでもビジネス同様「したたかさ」がかいま見える。初戦のポーランド戦。FWニャンが足を痛め、右サイドのピッチ外で治療していたが、相手の不用意な浮き球のバックパスが出た時にピッチへ戻ると、そのままボールへ向かって加速しゴール。もちろん、ルールの範囲内だ。相手は不意打ちになすすべがなかった。ピッチでも油断は禁物。隙を見せればライオンの一撃を食らう。

 【組織化】 アフリカのサッカースタイルは個のイメージが強いが、今回は組織化された守備でポーランドを完封している。山田さんはその理由に、シセ監督の存在と、欧州でのプレー経験者の多さを挙げる。「年長者の言うことを聞く国民性。シセ監督は02年のW杯の出場者でリスペクトもあると思う」。各選手が欧州でプレーの秩序や決まり事を学んだことが代表につながっているとしている。

 【娯楽】 野球、ゲームなど日本ほど娯楽がありふれていないため、子供たちは<1>サッカー<2>セネガル相撲<3>バスケットボール、の順でスポーツを楽しむ。海岸の砂浜では子供たちが毎日、サッカーに熱中する。子供は裸足でも平気。デコボコの砂浜でトラップの技術、足腰が鍛えられる副産物もあり、山田さんは「セネガルの国内リーグでも基本技術がしっかりしている印象」と話す。ちなみに、セネガル相撲はトップクラスになるとファイトマネーが1000万円。現地では夢がふくらむ競技だという。普段の生活はのんびりしており、特有の身体能力の高さを実感することは少ないが、山田さんは「中学生レベルになると、一緒にサッカーをしてもかなわない」と脱帽していた。

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 「テランガのライオン」と日本代表の一戦。ピッチで「おもてなし」は皆無だろう。カギは主導権の攻防。先にしびれを切らしたら負けだ。日本はコロンビア戦同様、序盤に慎重な相手の出鼻をくじくことが必要になってきそうだ。

 ◆セネガル山田 本名・山田一雅。法政大を卒業後、ウェブメディア企業に勤務するが、厳しい環境に飛び込もうと、単身セネガルへ。日本人向けの宿「シェ山田」の運営、観光ガイド本「アフリカ旅行ガイドブックセネガル」の執筆、販売のほか、ヒップホップMCとしてセネガルサッカー協会の協力を得て「日本対セネガル戦・非公式テーマソング」を制作し「Youtube」で発表。現地コーディネーターなども務める。