D組のアルゼンチンはクロアチアに0-3と敗れ、02年日韓大会以来となる1次リーグ敗退が現実味を帯びてきた。前半は0-0で折り返すも、後半8分にGKカバジェロの致命的なミスから先制点を献上すると、MFモドリッチとMFラキティッチにゴールを許し、万事休す。頼みのメッシが不発に終わり、1974年西ドイツ大会以来44年ぶりに2戦未勝利の屈辱を味わった。

 メッシによる「5人抜き」の再現はならなかった。後半31分。メッシがセンターライン付近からドリブルを始めた。あのマラドーナが、メキシコ大会準々決勝イングランド戦で5人抜きから中へ切れ込んで得点を決めた伝説のプレーの再現かと思われたが、メッシは外に追い込まれてシュートまでいけず。エースの沈黙とともにチームも敗れた。

 クロアチア戦では4バックから3バックに変更し、メッシをトップ下から右サイドに配置した。この試合ではメッシへのパスは29本に終わった。初戦のアイスランド戦は76本を集めて攻撃のすべてをメッシに託した戦術から一転、他の選手で攻撃の起点を作り、メッシを最後に生かそうとした。

 だが、残暑のブラジルではメッシを除いたフィールドプレーヤー9人の平均走行距離が10キロを超える試合が多かったが、ロシアの涼しい気候で同平均9・83キロと減少。結局、メッシはシュート1本(枠内シュート0本)に終わった。サンパオリ監督は「メッシとともに戦うベストなチームを見つけられなかった」と頭を抱えた。

 32年前マラドーナという天才を生かすシステムで優勝した。マラドーナと同じ役割をメッシに託したが、大苦戦。現代のサッカーでは全員が機能しなければ大舞台での優勝は難しい。メッシだけでなく、ポルトガル代表FWロナウドも強豪国に属しながら、ワールドカップ(W杯)での優勝経験はない。

 国民の間ではマラドーナが観戦するとメッシが得点できないという話題も出ている。監督と選手の関係で出場した南アフリカ大会では5試合無得点。前回大会のイラン戦ではマラドーナが帰った直後の後半ロスタイムに決勝点が生まれた。第3戦はマラドーナが観戦するのか? いずれにせよ、このまま終わるわけにはいかない。