10年以来2大会ぶりの王座奪還を目指すスペインは引き分け以上で、決勝トーナメント入りは決定、モロッコは2連敗で1次リーグ敗退が決定している。これから上昇カーブを描いていきたい「無敵艦隊」にとり、モチベーション維持が難しい相手を下し、弾みとしたい一戦だった。

 まさかの先制点だった。前半14分、ハーフウエーライン付近でのパス交換の緩慢さを突いたのはモロッコだった。MFイニエスタとDFセルヒオラモスのミスを逃さずにFWブタイブがボールをかっさらうと、ゴールへ一直線。GKデヘアのまたを抜いてゴールネットを揺らした。

 立ち上がりから70%以上のボール保持率を誇ったスペインは、ふがいない失点に奮起するように、ここからテンポアップ。すぐに同点弾を生む。前半19分、3人の連動性で一気にゴールを奪った。MFイニエスタがMFイスコにつなぎ、そこからFWディエゴコスタのいポストプレーへ。ボールを直接左にはたくと、走り込んできたイニエスタが繊細で吸い付くようなトラップの全速でエリア内左を深く侵犯し、マイナスの折り返し。ここにイスコが合わせ、豪快に右足で蹴りこんだ。

 攻勢を強めるスペインに対し、モロッコは荒いプレーが増え始める。競り合いで倒れた相手を踏みつけるなどで、立て続けてに2枚のイエローカード。その後もスペインが一方的にボールを試合する展開が続き、1-1で前半を折り返した。

 後半は失うものがないモロッコが、前線からのプレスを強めた。10分にはCKのカウンターから一気に攻め上がると、1度は守備に跳ね返されたところから2次攻撃。右サイドからN・アムラバトが放ったミドルシュートは惜しくもゴールポストに当たった。

 なかなか追加点を奪えないスペインは後半29分に2枚替え。MFティアゴ、FWディエゴコスタに代わり、MFアセンシオ、FWアスパスを投入した。

 追加点を奪ったのはモロッコだった。後半36分のCK。MFファジルの蹴ったボールが交代出場のFWエンネシリの頭にピタリと合い、ゴール右に吸い込まれた。マラガでプレーする21歳を投入したルナール監督の采配がピタリとはまった。

 スペインは負ければ1次リーグ敗退の可能性もある中で、後半39分にMFシルバに替えてFWロドリゴを入れた。土壇場の後半45分、ショートコーナーからのDFカルバハルの右クロスをアスパスがヒールでゴールに流し込んだ。これが1度はオフサイドと判定されたが、VARによる判定の結果取り消され、なんとか同点に追いついた。

 スペインは1勝2分のグループ1位で通過を決めたが、守備に大きな不安を残し、7月1日にA組2位ロシアとの決勝トーナメント1回戦を迎える。