前半を0-0で冷静に切り抜けた西野ジャパンは、後半になって一気に計算が狂った。武藤との2トップで前線から激しいプレスに駆け回っていた岡崎だったが、異変が起きる。後半も限界まで走り、岡崎に代えて大迫を投入する-。それが西野監督のプランだった。その交代カードの1枚目が、いきなり後半1分38秒に訪れる。右足首を痛めた岡崎はピッチに座り込み、大迫はすね当てを慌ててストッキングに滑り込ませ、やや緊張した表情でピッチに入った。

 14分に失点すると、ベンチは混乱する。点を取るしかない状況に、20分に宇佐美に代えて乾を投入。点を取るしかない、そういう気迫がみなぎっていたが、他会場のコロンビアが1点を先制した情報が会場を駆け巡った直後から、空気が一変する。

 37分に長谷部が途中出場する。西野監督の思惑を理解した長谷部は、右手の人さし指と中指をかざし、2枚のジェスチャー。日本はフェアプレーポイントでセネガルをイエローカードの数で2枚下回っていた。日本も、セネガルもそのままの状態ならイエローカードの枚数の差になる。その差が2枚。つまり、これ以上反則でカードをもらってはいけない、そういう意思表示を伝えた。

 38分過ぎから試合は完全に攻防を失い、日本がゆっくりと最終ラインでボールを回すだけの異常な状態。スタンドにはブーイングが鳴り響く。戸惑う選手。そんな様子を見た長谷部は41分、2枚のポーズを示しながら、動揺する選手を落ち着かせるよう、冷静にボールを回しに専念した。終盤の数分間、ボールが全くピッチを出ず、ポーランドの交代選手がピッチ脇で立ち尽くす珍しい光景が痛々しい末のH組の幕切れだった。