ドイツが負けた。世界に激震が走った。ブラジルとともに常にW杯の「主役」を張り続けた強豪が、アジアの韓国にまさかの敗戦。W杯史上初めて1次リーグで姿を消した。前回大会で1-7と惨敗を喫していたブラジルは大喜び、過去の大会で苦杯をなめてきた欧州各国も喜びながらも驚きを隠せない。W杯ではありえない「事件」に、全世界が興奮に包まれた。

 ドイツの敗退を告げるホイッスルに、全世界が反応した。他の国とは違う。W杯で常に上位に君臨するドイツが負けたのだ。世界中にSNSが飛び交い、まさかの敗戦で沸騰した。その衝撃の大きさは、一夜明けても収まらなかった。

 フランスのレキップ紙は1面で「ラ・ベレジナ」と報じた。200年前、ナポレオン軍がロシアから撤退する際に寒さなどで兵力の多数を失ったという「大失敗」を意味する言葉。イタリア紙ガゼッタ・デロ・スポルトは「歴史に終止符」として敗戦を伝えた。同コリエレ・デロ・スポルトは「一緒にバカンスを楽しもう」と、欧州予選敗退の自国に重ねて同情した。

 英国も沸いた。大衆紙サンは1面で「シャーデンフロイデ」。ドイツ語で「他人の不幸で得られる喜び」の意味だ。同紙は、韓国の得点がVAR判定で認められた後、テレビの司会者が「VAR大好き」とツイートしたことも紹介した。

 前回大会準決勝で1-7と屈辱的な大敗を喫したブラジルもお祭り騒ぎ。決勝トーナメント1回戦でリベンジするチャンスがあったが、それ以上に「宿敵」の早期敗退を大喜びした。FOXスポーツは公式ツイッターで「AHAHAHAHAHA…」と嘲笑。テレビ司会者は、思わず「7点取られろ!」と叫んだ。

 もちろん、ドイツでも敗戦には厳しい声があがる。ビルト紙は「W杯の悪夢」として、敗因を分析。キッカー紙は「黄金世代はもう最後」として代表チームを厳しく批判した。元代表GKカーン氏は「代表のユニホームに袖を通すという意味は、非常に重い」と、闘志のかけらも見せずに敗れ去った後輩たちを糾弾。メルケル首相も「悲しい」とコメントするなど、まさかの敗戦に騒然となった。

 元イングランド代表FWリネカー氏が90年イタリアW杯準決勝後に発した「最後に勝つのは、いつもドイツ」という発言は、同国の強さを表す「決まり言葉」になった。この日、韓国に敗れた直後に同氏はツイッターを更新。「最後に勝つのは、いつもドイツ」の後に「とは限らない」と付け足し「歴史に終止符が打たれた」と続けた。W杯で勝ち続けたドイツの歴史が終わった。復活するのは4年後、とは限らない。