終了間際の後半49分、ブラジルのFWドウグラスコスタは懸命に右サイドを崩し、FWネイマールに託す。ペナルティーアークのネイマールは仲間の思いを右足に乗せ、ボールを曲げた。ゴール右上の角、GKクルトワの手から最も遠いところをイメージしたが、ややボールは真ん中へ。名手は体を反転させながら右手を伸ばし、最後の反撃を封じた。

 ネイマールは敗退が決まるとダラリと腕を投げ出し、ピッチにしゃがんだ。今大会は何度も“演技”を指摘された。ピッチに倒れていた時間が、決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦までの4試合で計14分(アメリカのスポーツサイト)と指摘され、批判された。「全く気にしない」と、強がったが、10番の背中には王国の重圧がのしかかる。倒されてはカードを要求し、FKやPKの回数を増やそうと何度もダイブした。

 6度目の頂点を目指したが、ベスト8で終わった。チチ監督は「質の高い、美しい試合だった。ベルギーがラッキーだったわけではない。技術があり、決定力もあった」と敗戦を認めた。自国開催の4年前は準決勝でドイツに1-7と大敗。リベンジの道のりは、赤い悪魔の前に途絶えた。