フランス1部パリ・サンジェルマンの選手たちが17日、来日した。昼過ぎに羽田空港に到着した一行はそのまま宿舎ホテルへ直行。その後、メッシ、ネイマール、エムバペの“ビッグ3”とガルティエ監督はすぐに来日会見に臨んだ。
12時間にも及ぶフライトの後、すぐに会見という気の毒なスケジュールだったが、3人ともそつなくメディアに対応。中でもエムバペの好青年ぶりが目を引いた。
会見の終盤やや疲れた表情を見せていたメッシ、終始(良い意味で)おちゃらけた雰囲気を醸し出していたネイマールと比べると、エムバペはドラえもんの「出木杉くん」のような優等生。受け答えもしっかりとしていた。
驚いたのが、エムバペが英語を話すこと。質問のために壇上に上がった少年に「How are you?(調子はどう?)」と声をかけ、翻訳用のイヤホンがうまく作動していない時には「It doesn't work(作動してないよ)」と司会の女性アナウンサーに訴えた。
今夏、エムバペがレアル・マドリードへ移籍するといううわさが世界中のメディアで報じられた。記事の中で「エムバペはフランス語以外にスペイン語も話せるため、チームに溶け込むのに時間はかからない」といったような報道もあった。だが英語が話せることは知らなかった。
日本人にとってはフランス語よりも英語の方がなじみがあるという気遣いだろうか。はたまた女性アナウンサーがフランス人、アルゼンチン人、ブラジル人の3人に時折、英語で話しかけていたからか。いずれにしても日本人に対してはフランス語ではなく、伝わりやすい英語を使うというところにエムバペの思いやりを感じた。
少年から「僕はセンターバックをやることが多いのですが、エムバペ選手を止める方法はありますか?」という質問を受けた。エムバペは「アドバイスをあげる必要はないんじゃないかな。君は強そうだからね。もし対戦したら絶対に君は僕のことをブロックすると思うよ」と答えた。そこはもっと具体的にアドバイスしてあげれば? とも思ったが、エムバペの優しさが表れた言葉だった。
先月、ワールドカップ(W杯)関連の取材のためにカタールを訪れた。世界各国から来た記者たちと夕食をともにしている時、フランス人記者に話しかけられた。パリSGの話題となり、私が「良い意味でも悪い意味でもピッチ内外で華のあるネイマールが大好きだ」と言った。するとその記者は「ハハハ、それはダメだよ。エムバペみたいにちゃんと真面目に努力をして、ピッチで結果を残す選手を好きにならないと」と笑いながら反論した。
日本とはまったく文化の違うフランスでも、エムバペのような「出木杉くん」はみんなから好かれるのだ。パリSGの来日会見を見ながら、あらためてそんなことを思った。
【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)