世界中が熱狂した3月1日のクラシコからわずか2週間後の現在、新型コロナウイルス感染症の急激な拡大がスペイン国内で深刻化している。3月3日の時点で150人だった感染者数が、14日には6271人(死亡193人)と40倍以上に増加しており、ペドロ・サンチェス首相が非常事態を宣言する事態となった。

薬局やスーパーなど生活に必要となる最低限の店舗以外の閉鎖、仕事や生活必需品の買い物など一部例外を除く外出制限の措置が15日間取られ、スペイン中がゴーストタウンのような雰囲気となりつつある。

新型コロナウイルスは当然、他国同様にスペインサッカー界にも大きな影響を及ぼしている。まず欧州で最初の大きな感染地域となった北イタリアのクラブとの対戦となった欧州チャンピオンズリーグのバレンシア対アタランタ、欧州リーグのヘタフェ対インテルミラノの無観客開催が発表され、最終的には延期が決定。さらにほかのイタリア地域のクラブとの対戦となった欧州リーグのセビリア対ローマも延期された。

スペインリーグも当初、無観客での開催が決定し、10日にエイバル対レアル・ソシエダードがその形で行われた。しかしその後、感染拡大の勢いが止まらず、13日に2節(1部リーグ:第28節、29節、2部リーグ:第32節、第33節)の一時休止が発表されたのである。

さらに翌週開催のマンチェスター・シティー対レアル・マドリード、バルセロナ対ナポリのスペイン勢クラブの試合を含む、欧州CLと欧州リーグが全て延期されることも13日に決定している。

その大きな原因の1つが、Rマドリードのバスケットボールチーム所属の米国人選手トレイ・トンプキンスが13日に陽性反応を示したため。Rマドリードのサッカーチームとバスケットボールの選手たちは、練習場シウダー・レアル・マドリードで、食堂やジム、レクリエーション室などさまざまな施設を共有している。そのためクラブは同日、即座に施設全ての閉鎖および選手たちの自宅待機、下部組織の活動休止を決定したのである。そのためトップチームの選手たちは約2週間、マドリード州から出ることはできず、クラブのフィジカルコーチ監修のもと、特別メニューを自宅で行っている。

同じマドリード州のクラブ、レガネスではゼネラルディレクター、マルティン・オルテガ氏が新型コロナウイルスに感染したため、選手、スタッフが自宅待機となった。

バルセロナは欧州CLのナポリ戦延期を受け、次の指示が出るまで無期限で活動停止を決定し、自宅でトレーニングを行っている。

また、スペインサッカー連盟はリーグ戦の延期期間、チームでの練習を控え、個人トレーニング実施を勧める通達を1部と2部の全42クラブに送っており、14日午前の時点で23クラブがそれに従っている。

1部ではRマドリード、バルセロナ、セビリア、バレンシア、オサスナ、バリャドリード、セルタ、久保建英のマジョルカ、レバンテ、レガネス、エスパニョールの11クラブ、2部ではアルメリア、エルチェ、Rバリェカノ、テネリフェ、マラガ、香川真司のサラゴサ、ラスパルマス、ルーゴ、山口瑠伊のエストレマドゥラ、フエンラブラダ、ヒホン、柴崎岳のデポルティボの12クラブが活動を休止している。

一方、14日午前の時点で優勝候補のリバプールを欧州CLで破ったアトレチコ・マドリードや乾貴士のエイバル、岡崎慎司のウエスカは通常通り練習を実施する予定になっているが、非常事態が宣言されたことにより状況が変わる可能性がある。

現時点では1部と2部のリーグ戦2節が一時中止となっており、他国のリーグ同様、少なくとも4月4日の週末まではリーグ戦が行われない。今後、各クラブへのコロナウイルスの影響を考慮し決断を下すことになる。

そんな状況の中、このままリーグ戦が再開されずにシーズンが終了した場合、来シーズンに向けてさまざまなオプションが推測されている。1つ目は現在降格圏内にいるマジョルカ、レガネス、エスパニョールの3クラブがそのまま降格するオプション。2つ目は1部の全クラブが残留して2部から2クラブが昇格し、来季のみ22クラブで行うオプションである。

日々状況が変化する中、この非常事態を早く終息させるべく、スペインでは「#YoMeQuedoEnCasa(私は家にいる)」をSNSで流し、感染拡大を防ぐ流れとなっており、賛同した多くの選手や監督、クラブもこれに続いている。

私もスペインに住む一市民として、一サッカーファンとして、一刻も早くこの状況が終息することを願っている。【高橋智行】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)