国内リーグが終了し、移籍市場の話題が活性化するこの時期、スペインではFIFAワールドカップ2026(W杯)北中米大会への期待が高まりだしている。
■FIFAランキング2位
FIFA(国際サッカー連盟)ランキング2位のスペイン代表は、W杯・1次リーグでカボベルデ(69位)、サウジアラビア(61位)、ウルグアイ(17位)と対戦するが、今大会における前評判はこれまでよりも高い。大手ブックメーカーは軒並みフランスと共に優勝の最有力候補に挙げているが、それを裏付けるだけの実績がある。
3年半前のカタール大会、ルイス・エンリケ前監督(現パリ・サンジェルマン監督)に率いられたスペインは、決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗退。指揮権がデラフエンテ監督に受け継がれた23年3月以降の道のりは順調だ。少なくとも現在、欧州でスペインよりも華々しい結果を残しているチームは存在しない。
過去の大会で引いた相手に行き詰まる場面が頻繁にあったことを教訓に、「ティキ・タカ」と呼ばれる伝統的なパス回しを軸に、ボールポゼッション、絶え間ない動きを重視したプレースタイルに、両サイドの突破力やスピードを活かした素早いトランジションを融合した。これが功を奏し、慢性的に抱えていた決定力不足の問題が解消され、1試合平均3・1ゴールという高い得点力を示している。
3年間の成績は、39試合29勝8分け2敗(※PK戦は引き分けにカウント)、120得点47失点。イタリア、ドイツ、フランス、イングランドなどの強豪を下し、敗れたのは欧州選手権予選のスコットランド戦と親善試合のコロンビア戦のみ。
その間、23年の欧州ネーションズリーグ、24年の欧州選手権と立て続けにタイトルを獲得し、昨年の欧州ネーションズリーグは準優勝(ポルトガルにPK戦で敗戦)。W杯欧州予選E組の成績は、6試合5勝1分け、21得点2失点の勝ち点16と無敗を維持し、13大会連続、通算17回目の出場を決定した。
さらに、昨年9月には11年ぶりにFIFAランキング首位に返り咲き(※現在は首位フランスと僅差の2位)、同年11月に代表チームの公式戦連続無敗の世界記録(31試合)でイタリアと並んだ。この記録を更新するチャンスがW杯初戦のカボベルデ戦となる。
■3分間の動画に国王登場
スペインサッカー連盟は先月25日、動画を通じてW杯の代表メンバー26人を発表した。約3分間の短編ドキュメンタリー映画のような動画は「スペイン国民の皆さん、おはようございます。今日は非常に特別な日です。デラフエンテ監督がW杯に向けたメンバーリストを発表します」というナレーションからスタート。
これまでの歩みを振り返った監督が、「この招集メンバーは私のものではない。皆のものだ」という大前提を改めて言葉にし、続いてスペイン国王フェリペ6世が登場。「代表が戦う時、我々も皆一緒に戦う」と熱いメッセージを発した。そして、メインとなる代表選手の名前を発表する大役を担ったのは、メンバー一人一人の背後に国全体が後押ししていることを象徴するスペイン国民だった。料理人、消防士、漁師、教師、政治家などが1選手ずつ名前を発表。最後に国王が再び登場し、「これが国を代表するリスト、これがスペインのリストだ」と力強い言葉で締めくくった。
優勝候補の一角に上がるメンバーの20人は数カ月前からほぼ決定しており、事実上6枠を争う形となっていた。3年半前のカタール大会から12人が選ばれ、2年前の欧州選手権からの変更はわずか10人。平均年齢は26・1歳で、30歳以上が6人、23歳以下が7人とバランスが取れており、その多くがビッグクラブで活躍する選手たち。さらに、24年のパリ五輪優勝メンバー5人と、若いながらも経験や実績を兼ね備えた選手が揃っている。
■バルセロナから8人選出
今回最も多くの選手を輩出したクラブはバルセロナで8人、続いてアーセナル、ビルバオ、アトレチコ・マドリードが3人。レアル・マドリードから史上初めて一人も入らなかったことはビッグニュースとなった。
GKはウナイ・シモン(ビルバオ)とラヤ(アーセナル)が順当に選出。注目された第3GK争いは、レミーロ(レアル・ソシエダード)に代わり、今季の活躍ぶりにより3月に代表デビューしたばかりのジョアン・ガルシア(バルセロナ)が勝利した。
サイドバックは予想通りの結果となった。右サイドはペドロ・ポロ(トットナム)とジョレンテ(Aマドリード)が入り、長年の功労者カルバハル(Rマドリード)は度重なるけがに苦しみ選外。左サイドはこの2年間安定してククレジャ(チェルシー)とグリマルド(レバークーゼン)が選出されている。
センターバックは一番のサプライズがあったポジションと言えるだろう。定位置を確保していたクバルシ(バルセロナ)とラポルテ(ビルバオ)に加わったのは、今回のメンバーで唯一、代表初招集となったプビル(Aマドリード)、デラフエンテ政権下で初招集のエリック・ガルシア(バルセロナ)だった。
一方でハイセン(Rマドリード)が外れたことは注目を集め、ル・ノルマン(Aマドリード)、パウ・トーレス(アストン・ビラ)、ビビアン(ビルバオ)、モスケラ(アーセナル)なども招集外となった。
■オヤルサバル決定力発揮
MFはロドリ(マンチェスター・シティー)、スビメンディ(アーセナル)、ペドリ(バルセロナ)、ファビアン・ルイス(パリ・サンジェルマン)、けが明けのミケル・メリーノ(アーセナル)の5人が順当にメンバー入り。残り2枠は、中盤から前線にかけてさまざまなポジションでプレーできるバエナ(Aマドリード)、長期離脱からの復帰後、レギュラーの座を取り戻したガビ(バルセロナ)が勝ち取った。
フォルナルス(ベティス)、アレイシュ・ガルシア(レバークーゼン)、カルロス・ソレール(Rソシエダード)、直前に負傷したフェルミン・ロペス(バルセロナ)、度重なるけがに苦しんだバリオス(Aマドリード)などは選外となった。
センターフォワードは、直近の代表戦10試合で11得点6アシストと圧巻のパフォーマンスを発揮しているオヤルサバル(Rソシエダード)に加え、高さのあるチーム最年長33歳のベテランFWボルハ・イグレシアス(セルタ)、前線のポリバレントな能力を有すフェラン・トーレス(バルセロナ)が選出された。
一方、サム・オモロディオン(ポルト)がけがで外れた他、アンス・ファティ(モナコ)、ゴンサロ(Rマドリード)、アジョセ(ビリャレアル)、代表で長年エースを務めたモラタ(コモ)などが外れている。
■ヤマルは初戦間に合わず
サイドアタッカーは、負傷中でW杯初戦に間に合わない可能性が高いチーム最年少18歳のヤマル(バルセロナ)、シーズンを通じてフィジカル面に問題を抱えるも、代表での実績からニコ・ウィリアムズ(ビルバオ)がメンバー入り。これに万能型のダニ・オルモ(バルセロナ)とジェレミ・ピノ(クリスタル・パレス)が加わり、驚異的な突破力を武器に3月代表デビューしたビクトル・ムニョス(オサスナ)がサプライズ選出となった。
バレネチェア(Rソシエダード)はけがでチャンスを逃し、ヘスス・ロドリゲス(コモ)、デ・フルートス(ラヨ・バリェカノ)、モレイロ(ビリャレアル)なども選ばれなかった。
5月30日に代表合宿をスタートしたスペインは、4日にラ・コルーニャ(スペイン)でイラク相手に壮行試合を行い、5日には今大会の拠点となるチャタヌーガ(アメリカ・テネシー州)に移動する。そして8日にプエブロ(メキシコ)でペルーと最後のテストマッチを行い、W杯に臨む予定となっている。
負傷中の選手(ヤマル、ニコ・ウィリアムズ、ビクトル・ムニョス)のフィジカルコンディションは懸念されるが、10年の南アフリカ大会以来、2回目の優勝を目指すスペインの選手層は厚く、期待も大きい。首都マドリードでは毎試合、中心の広場でパブリックビューイングが開催され、熱狂的な雰囲気に包まれるのは間違いない。お家芸とも言える華麗なパスサッカーで、16年ぶりに優勝トロフィーを持ち帰ってくれることをスペイン国民は心から願っている。
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)



