23-24年シーズンもあと3カ月となる中、欧州チャンピオンズリーグ(CL)は徐々に重要な局面へと突入している。

欧州CLにおいてスペイン勢は、1次リーグで敗退したセビリア以外の4チーム、レアル・マドリード、バルセロナ、アトレチコ・マドリード、レアル・ソシエダードがグループリーグを首位通過し、他国に比べ素晴らしい滑り出しを見せていた。

迎えた決勝トーナメント1回戦、4チーム全てが初戦はアウェーゲームであったことから、どのチームも苦戦を強いられることとなる。Rマドリードはライプチヒに勝ったものの、バルセロナはナポリと引き分け、AマドリードとRソシエダードはそれぞれセリエA首位のインテル・ミラノとフランスリーグ首位のパリ・サンジェルマンに屈し、スペイン勢の通算成績は1勝1分け2敗と厳しい結果となった。

決勝トーナメント1回戦第1戦のすべての試合結果を受け、ブックメーカー大手bwin社の出した優勝予想オッズは、マンチェスター・シティーが2・60倍でトップ。Rマドリードは5・50倍で2位、バルセロナは17倍で7位、Aマドリードは41倍で9位、Rソシエダードは101倍で12位。

このオッズを見ても分かるように、4チームの中で最も準々決勝進出が難しいと思われるのはRソシエダードだ。それでもまだ第1戦を終えたのみ。スペイン勢には決勝トーナメント1回戦を勝ち抜くために重要なファクターとなるホームゲームが残されている。

Rマドリードがサンティアゴ・ベルナベウで最後に敗れたのは昨年4月。それ以降、ホームで公式戦23試合無敗を誇っている。

カンプ・ノウが改修中のバルセロナは、今季の本拠地エスタディ・オリンピック・リュイス・コンパニスでやや取りこぼしが多いのが気になるが(3敗)、直近のヘタフェ戦は4-0で勝利し、調子を上げている。

Aマドリードは昨季の欧州CLファイナリスト相手に、敵地での第1戦でほとんど何もできなかったが、シビタス・メトロポリターノでは今季の公式戦18勝1敗、ここ1年で負けたのはわずか1回と、ホームでの信頼度は非常に高い。

一方、Rソシエダードは現在、大きな問題を抱えている。昨年11月26日のセビリア戦を最後に、レアレ・アレーナで公式戦ここ7試合勝利なし。さらにアウェーゲームを含めた直近8試合でわずか1勝しか挙げられておらず、成績不振に陥っている。

スペインのラジオ局カデナ・セルでRソシエダードを担当するベテラン記者は、パリ・サンジェルマン相手に0-2の不利な状況の中、次ラウンド進出に向け、悲観的に開口一番こう訴えた。

「とにかく奇跡、奇跡が必要だ!」

初戦で一瞬の隙をも見逃さないパリ・サンジェルマンの強さを目の当たりにしたことで、半ば諦めた様子を見せながらその理由を説明した。

「パリ・サンジェルマンの前線の選手たちのスピードは第1戦で見ての通りだ。エムバペ、デンベレ、バルコラなどを擁し、今度も確実に1点は決めてくるはずだ。そして今のラ・レアル(※Eソシエダードの愛称)には、パリ・サンジェルマン相手に3ゴールを奪えるような攻撃力は残念ながらないだろう」

「もしラ・レアルが開始10分までに先制点を奪い、さらに2-0にして延長戦に持ち込むことができれば勝機はあるかもしれないが…でも私はラ・レアルに3点を決める力はないと思っている…」

Rソシエダードは堅固な守備を武器に大崩れはしていないものの、得点力不足に加え、連戦による疲労、それに伴うけが人続出や選手層の薄さといった問題が山積みだ。さらに替えの効かない存在となっている久保建英がアジアカップから戻った後、公式戦6試合のほぼ全てに出場しているため、フィジカルコンディションが大いに懸念されている。

この状況下、パリ・サンジェルマン相手にホームでどう戦うのか? イマノル・アルグアシル監督がどのような打開策を見出すのか? チーム状態、得点差、クラブ間格差などを考慮した場合、あらゆる要素が非常に厳しく感じられるが“奇跡”が起こることを期待したい。【高橋智行通信員】(サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」/ニッカンスポーツコム)