これぞ本物のスターだ! 腎臓結石の痛みで17日の準決勝を欠場していたバルセロナ(スペイン)のアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(28)が、リバープレート(アルゼンチン)戦でスタメン復帰。前半36分に大会歴代最多タイの5点目となる先制ゴールを左足で決め、チームを4年ぶりで最多となる3度目の優勝に導いた。メッシは出場3大会連続で決勝でゴールを決める千両役者ぶりだった。

 メッシに激しいブーイングを飛ばしていた2万人の相手サポーターも、ぼうぜんとするばかりだった。前半36分。DFアウベスの右クロスをFWネイマールが頭で折り返す。すると中央のメッシが「らしい」芸術プレーを見せた。

 相手DFからボールを守るように半身になり、おなか付近でワントラップ。すぐさま左足アウトサイドでゴールに流し込んだ。エースが決めると、あとはやりたい放題。後半にはスアレスの2ゴールも生まれた。最強3トップ「MSN」のNことネイマールは無得点だったが、2アシストで勝利に貢献した。

 メッシにとって09、11年に続く3度目のクラブW杯制覇は汗ひとつかかないような余裕の勝利。とはいえ、この1年半のつらさを思い出すと感慨に浸らずにはいられなかった。「優勝で1年を終えることはうれしい」。試合後の言葉に実感がこもった。

 ケチのつき始めが14年W杯ブラジル大会前後。その頃から原因不明の嘔吐(おうと)を繰り返し、たまらず北イタリアまで名医をたずねた。ビタミンやミネラル、植物繊維などが豊富なオーガニック食品中心の食生活に変えることを勧められ、今年1月ごろからコンディションが復調した。

 だが、今度は左膝の内側側副靱帯(じんたい)を損傷し、9月から11月にかけて公式戦9試合を欠場。代表ではW杯ブラジル大会、15年南米選手権といずれも準優勝に終わった上、試合前の国歌を歌わない態度もあり、母国メディアの批判の的となった。

 精神的に不安定になり、インタビュー中に「もっと努力しろ、国の代表としての誇りを持て…。そんな批判を聞くたびうんざりする。くそったれ勘弁してくれよ」と汚い言葉も飛び出した。そんなエースを救ったのもスアレスとネイマールの存在だった。プレーの負担が減り、ピッチ外でも精神的助けになった。

 11年大会決勝・サントス戦からバルサのスタメンは6人変わった。メッシは「僕たちは進化している。ボールを保持するアイデンティティーは失わず、少ないタッチ数で相手ゴール前へ攻め込むようなプレーもするようになった」と2人が加入した効果を口にする。

 メッシは試合後、世界一のうれしさをかみしめた。「どの試合でも3人で良いプレーが出来ている。これからも多くのタイトルを取れたらうれしい」。スアレス、ネイマールとかわした抱擁には感謝の気持ちが込められていた。【千葉修宏】