セリエAボローニャ入りが決まった日本代表DF冨安健洋(20)が15日、千葉・成田空港からイタリアへ出国した。ベルギー1部シントトロイデンから、24年6月までの5年契約と移籍金800万ユーロ(約10億円)+出来高で完全移籍。同国11人目の日本人にして、初のセンターバック(CB)としてカテナチオの国に挑戦する。交渉の際、来夏の東京オリンピック(五輪)出場を直訴して容認されたことも明かした。

冨安の表情は希望に満ちていた。「ステップアップできればと思っていたので実現してうれしい」。世界的な堅守のリーグに挑む権利を20歳でつかみ「正直、想像より早い」と笑顔を見せ「もっと守備を学びたい気持ちがあってイタリアを選んだ」。DFではインテルミラノ長友以来で、CBでは初。王者ユベントスのロナルドら「今はストライカーが多い印象なので対戦して成長したい。まずは試合に出ないと」と燃えた。

南米選手権の後、直接現地へ。天然芝5面など充実した施設を見学し、獲得に動いた関係者の「熱意」に心を打たれた。同じCBだったミハイロビッチ監督から電話で口説かれ「最終ラインから持ち上がったり動きながら守る、自分の攻守の特長を見てくれているなと感じた。可変システムへの対応も『できるだろう』と言われた」。その「情熱的な監督」は2日前に白血病を告白したが、退任はしない。「一緒に戦っていきたい」と男にする覚悟だ。

移籍交渉の中で来夏の東京五輪に「出たい」と直訴し、現段階では認められたことも明かした。ただ「試合に出ないと森保さんに選んでもらえない」と環境を変えたことへの恐怖も隠さない。アジア杯期間を除く全27試合で先発した昨季ベルギーでの安定を捨てた挑戦。「ボローニャでも1年間レギュラーで出られれば自然と五輪は見えてくる」と成長して夢舞台に立つ。

11日から始まっているボルツァーノ県カステルロッドでの国内1次合宿に合流し、オーストリアでの2次合宿を経て8月下旬の「開幕スタメンを目指す」。アジア杯や南米選手権で痛感した「力不足」を克服すべく、カルチョの本場で勝負する。【木下淳】