[ 2014年2月18日8時38分

 紙面から ]13年3月、フィギュア世界選手権女子SPで演技する浅田

 4年前とは顔が違う。フィギュアスケート女子の浅田真央(23=中京大)に、自己表現分析の第一人者から太鼓判だ。日本に「パフォーマンス」という言葉を持ち込んだ日大芸術学部の佐藤綾子教授(67)が10年バンクーバー五輪と今季の表現面の違いとして、顔に注目。表情筋の動きの多彩さなどから、より見る人の印象に残る表情を手に入れた進化を分析した。

 浅田の映像をじっくりと見比べた佐藤教授には、表情の違いが一目瞭然だった。特に注目したのが、片足を上げて大きな円を描くように滑るスパイラル。「観客、審査員を見ていきますが、表情が変わっていく。4年前はあまりここでは顔に動きがないですね」。緩やかな滑りだからこそ、その表情の変化が際だつ。それが浅田の4年間の進化の証しだった。

 日本人は誰かと話すとき、平均時間として1分間のうち28秒間は喜怒哀楽が読めないようなニュートラル(中立的)な顔をしているという。顔には30ほどの表情筋があるが、普段から動かす訓練、意識がないと、その時間を減らすことはできない。「多様な表情を作り出すため、日頃の練習から努力しているのだと思います」と同教授は話す。

 浅田が特に転機となったのは12-13年シーズンのショートプログラム(SP)「アイ・ガット・リズム」だった。それまでにはないアップテンポな曲。振り付けのニコル氏から「楽しく滑れるように」と提供された演目で、浅田の表情がめまぐるしく変わる。ここで意識が磨かれたことで、今季はさらに表現法が秀逸になった。「自分のスケート人生」がテーマのフリー「ピアノ協奏曲第2番」では、悲哀から歓喜に変わる様が見て取れるという。

 さらに、浅田が13年から本格的に再開したバレエの効果も読み取った。自身も13年前から習う同教授は「バレエは鉄則があって、観客席から一番美しくみえる肩の開きはどれかを考え抜きます。フィギュアなら正面にいるジャッジに向かってですね」と話す。例えば横向きに肩を開いてポーズを取ったとき、首に筋が走る。曲げたり、回転させる働きを持つ胸鎖乳突筋だが、「このラインの出し方にまでこだわっているのを感じます」と分析した。

 浅田は8日に行われた団体戦女子SPではトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)の転倒もあり、64・07点の3位。だが、表現面を評価する演技構成点は33・82点と高得点を稼いだ。この中には「パフォーマンス」の項目もあり、そこには当然顔も含まれる。「見ている人にインパクトを残せる。彼女はいま最高の状態にあると思います」。その言葉自体を日本に持ち込んだ権威のお墨付きは、金メダルへの期待を大いに抱かせるものだった。【取材・構成

 阿部健吾】

 ◆佐藤綾子(さとう・あやこ)1947年(昭22)1月20日、長野県生まれ。信州大卒業後、育児をしつつ英語通訳国家試験合格。30歳で上智大学大学院英文科に入学し、博士課程在籍のまま、ニューヨーク大学大学院パフォーマンス研究学科修士課程入学。米国で劇作家のアーサー・ミラーらとも交友を結ぶ。パフォーマンス心理学で博士号取得。08年4月からは日大芸術学部で教授を務めている。「小泉進次郎の話す力」など著書多数。