天才スイマーに、光が差した。競泳女子200メートル平泳ぎで、渡部香生子(21=早大)が、復活優勝を遂げた。予選を全体トップの2分27秒05で通過。決勝は逆転で2分23秒05で大会連覇を果たした。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)後に引退も頭をかすめたが、現役続行。2年ぶりの代表復帰となったパンパシフィック選手権は予選のレース後に高熱が出て休養した。そんな苦しみを乗り越えて、ついに輝いた。

 15年世界女王が、帰ってきた。渡部が、3番手でターンした150メートルから逆転勝ちで連覇。「最後の50メートルが勝負と思った。勝ちたい気持ちが強かった。差せてよかった」と目を細めた。

 16年リオ五輪は準決勝敗退。失意の中で「私、どうして水泳をしているのかな。あと2カ月、インカレまで泳いで辞めよう」と思った。「私、社会に出て働くとして何ができるかな。就活の面接とかできなさそうだな…」。娘が悩む姿を見かねた母恵美子さんに「辞めたければ、辞めれば」と言われて絶句した。「『頑張れ』と言ってほしかったけど…。そうと言われたら、逆に辞められないじゃんって。すがすがしい気持ちになった」と笑って言う。

 昨年は右足のけがもあって6年ぶりに代表落ち。2年ぶりの代表となったパンパシは100メートル予選を泳いだところで発熱し棄権した。休養中にホテルのテレビで同じ早大の渡辺一平が初優勝する姿を見て「うれしい半面、自分もそこにいたかった。いいなあ」。東京の無念も、ジャカルタで晴らした。「つらいこと、うれしいことがたくさんあったが、結果を残せた。ステップアップにつながる」と少し笑った。【益田一弘】