東海大には、大学にいながら標高4000メートルの高地トレーニングを行える低圧室がある。13年に大学の「箱根駅伝支援プロジェクト」として本格的に導入され、気象条件や温度、湿度も自由に設定できる。主力選手たちは週に1、2回、低圧室でトレーニングを行う。苦しい状況で追い込み、底力を向上させてきた。

 約20センチの分厚い灰色の壁に埋め込まれた円形の窓は、まるで潜水艦のようだ。寺尾保スポーツ医科学研究所教授(67)の指導の下、選手たちは体調に応じて60~90分間、低圧室内のランニングマシンで走る。

 ランニング中は酸素の体への行き渡りの程度を示す動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測し、どれだけ自分を追い込めたかを数値で可視化。寺尾教授は「より飽和度が低く酸素を取り込める体にすることで、最後まで箱根を走りきれる。一般人は90%後半、でも選手たちは60%台。驚きの数字ですよ」と話した。

 2年生から低圧室でのトレーニングを行っている三上嵩斗(3年)は、高校3年時の高校総体地区予選5000メートル決勝で、残り1周のラストスパートができず、出場を逃した悔しい経験があった。「元々ラストスパートが得意ではないと思っていたけれど、今ではラストスパートでもう一段粘って後続を引き離せる」と胸を張った。10月の出雲駅伝では5区区間賞、10年ぶり4度目の優勝に大きく貢献した。三上は日頃から低酸素テントで睡眠をとり、常に体を高地に置く。「高地トレーニングは東海大の強み」と笑みを浮かべた【戸田月菜】(おわり)