陸上女子100メートルで高校歴代2位の11秒54の自己記録を持つ御家瀬緑(恵庭北3年)が今季北海道内初戦となる北海道高校選手権札幌地区予選に出場。決勝で11秒57(向かい風0・2メートル)の大会新をマークし2年連続の優勝を果たした。

伸び盛りの17歳の勢いは止まらない。予選、準決勝は力を抑えて通過。迎えた決勝。「決勝前に追い風になったので『あっ(記録も)出せるかなぁ』って思ってました」。号砲とともに飛び出すと、ぐんぐん加速。序盤から先頭を譲らず、セカンドベストでゴールラインを切った。右隣では昨年高校総体同種目8位の実力者・石堂陽奈(立命館慶祥2年)が11秒73の好記録で猛追したが、寄せ付けなかった。御家瀬は「織田記念よりリラックスして最後まで走れた。足音は聞こえていたがあせらず走れました」と笑顔を見せた。

2年生で総体を制し高校最速女王となった昨年は、日本選手権でも4位。日本代表として、同郷の福島千里(セイコー)らとともにアジア大会のリレーに出場した。飛躍の1年だったが、御家瀬は「アジア大会で足りなさ、悔しさを味わった。(福島とは)世界と戦うということに対する気持ち、取り組み方が全く違った。去年の自分じゃ代わりになる人はたくさんいた」と悔しさを感じていた。

冬場はスクワットや懸垂などの筋力強化とともに、ストライド(歩幅)を広げる練習メニューをこなしてきた。最大でも2メートル10センチだった歩幅が、現在は福島と同じ2メートル30センチまで広がった。今季初戦となった4月の織田記念では日本選手権女王の市川華菜(ミズノ)世古和(乗馬クラブクレイン)らを抑えて日本勢最高の2位。「冬季練習で練習をしっかり積めたのが大きい。上半身を強化したことで体のぶれがなくなり、走りに安定感が出てきた」。自信を胸に臨んだ今大会でも今季日本女子短距離勢で唯一の11秒5台を再び記録した。

追い風1・9メートルの好条件でマークした織田記念の自己記録に0秒03迫る愛弟子の快走に、指導する北海道ハイテクACの中村宏之監督(73)は「この状態でこの記録はたいしたもの。(11秒)7ぐらい切るかなとは思っていたが、力ですよね。今年は(11秒)5台を出している成年もいない。すごいすごい本当にすごい」と目を細めた。

今季は土井杏南(JAL)が埼玉栄時代に記録した11秒43の日本高校記録の更新が目標の1つ。御家瀬は「しっかり疲労から回復して、北海道大会(6月18日開幕)に向けて練習をやっていきたい」と先を見据えていた。