ニューヒーローはクラスの人気者だった。びわ湖毎日マラソンで日本新記録を樹立した鈴木健吾(25=富士通)を愛媛・宇和島東高監督時代に指導した和家(わけ)哲也さん(49)が28日、教え子の素顔を明かした。愛媛県内でテレビ観戦し、快挙を祝福。世界の舞台へ歩み始めた鈴木に対し「走ることが大好きであり続けて欲しい」と願った。

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テレビ画面に映る鈴木が、高校時代に重なって見えた。30キロを過ぎ、周囲をキョロキョロと観察する教え子。和家さんは「“あの目”をしているな、と思って…。強い選手にかかっていく時は、いたずらっ子の目になるんです」と懐かしみ「ここまでの記録とはビックリしました」と笑った。

鈴木が宇和島東高に入学した11年春、同時期に赴任した。今も身長は163センチ、当時から小さな体を余すことなく使う姿に「走ると大きく見える」と驚いた。その夏、自宅に部員を泊まらせる合宿を実施。午後の練習で思うように走れない鈴木を見て、諭したことがある。「『おかしいな』と思ったら『朝練と午後の間も走っていた』って言うんです」。3年間で厳しく指導したのはこの時だけだ。

いつも笑顔の男子生徒は「健吾」と呼ばれた。3年生の秋だった。クラスの女子生徒が「インフルエンザになったらダメ」と休み時間に窓を開け、換気を始めた。12月に京都で行われる全国高校駅伝出場を志す鈴木のためだった。皆が応援し、鈴木は練習日誌に「クラスのみんなを、卒業旅行で都大路に連れて行きたい」とつづった。念願かない、ラストチャンスで初出場。神奈川大でも関東に住む高校時代の友人が、箱根駅伝を現地観戦してくれた。

和家さんは「彼を象徴する一言」と切り出し「素直な負けず嫌い」と性格を表現した。自分に妥協なく勝負にこだわる一方、今も帰省時は差し入れ片手に後輩の大会を訪れる。「彼は本当に走ることが大好きな子。その気持ちをこれからも持ち続けてほしい。そうすれば結果はついてくると思います」。故郷から飛躍を願っている。【松本航】

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