日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦副会長(65)が、第98回東京箱根間往復大学駅伝を占った。往路は混戦としながらも、総合優勝は青学大のV奪還を予想。他校エースの名をあげながらも、選手層の厚さと安定感はゆるぎないとした。

駒大、青学大の「2強」を軸に混戦といわれるけれど、総合優勝となると青学大が頭一つ抜けている。スーパーエースはいないけれど、全員が1万メートル28分台。補欠を含めた16人の誰が出ても、力は変わらない。

出雲と全日本は2位だった青学大だが、長丁場の箱根では選手層の厚さがものをいう。選手のコンディションを直前まで見て、入れ替えができるのも強み。往路で出遅れたとしても、トップとの差が3分以内なら十分に逆転できる。

各校とも前半に力を入れるだけに、往路は混戦。特に出雲で初出場初優勝した東京国際大がおもしろい。1区山谷昌也、2区ヴィンセント、3区に丹所健を使えば、3人で主導権を握り優勝も見えてくる。前回往路優勝の創価大も力をつけている。早大や明大、東洋大もスピードある選手がいて優勝を狙える存在だ。

往路の見どころは「山の神」が現れるかどうか。登りの5区は大差がつきやすい。1人の快走がチームの順位に大きく影響する。予想もしない「神」が出てくれば、往路の順位も大きく変わってくる。新たな「山の神」に期待したい。

個人的に注目するのは、やはり2区のエース対決。東京国際大のヴィンセント、青学大の近藤などに対して、駒大のスーパーエース田沢がどんな走りをするか。昨年こそ7位だったが、走れば確実に結果を出すのが強み。前傾姿勢を保ちながら突っ込んでいく田沢の走りは、今の厚底シューズにマッチしている。世界に通用する走りをみせてほしい。活躍すれば、チームに勢いもつく。

東京オリンピック(五輪)3000メートル障害で7位になった順大の三浦龍司にも期待する。2区で起用されれば、各校のエースとの直接対決もみられる。五輪の経験を、箱根に生かしてほしい。1年生ながら出雲と全日本で快走した東洋大の石田洸介も将来楽しみな選手。あまりプレッシャーのかからない区間で起用するなど、長い目でみてほしいと思う。

ここ数年、選手の高速化が進んでいる。以前はほとんどいなかった1万メートル27分台の選手が、今大会は10人もいる。もちろん、高速シューズの影響もあるが、選手のレベルが上がっているのも確かだ。ただ、速い選手と強い選手は違う。タイムを争うだけでなく、どんな状況でも相手がある中で自分の走りをする。この大会から、そんな力のあるランナーが育ってほしい。

ここ数年、箱根出身選手の国際部隊での活躍が目覚ましい。以前は箱根が「ゴール」だったが、指導者が「世界」を意識してきたことも大きい。「箱根から世界へ」。今回もまた、五輪や世界選手権に続くいいレースが見られると思う。