往路を制した青学大が10時間43分42秒の大会新記録で、2年ぶり6度目の総合優勝を飾った。

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往路を制した青学大が10時間43分42秒の大会新記録で、2年ぶり6度目の総合優勝を飾った。復路の5時間21分36秒も大会新。復路は1度も首位を譲らず、3人が区間賞の快走。2位順大に10分51秒の大差をつけての圧勝だった。2位は順大、昨年覇者の駒大は3位。昨年4位に終わった反省を踏まえ、チーム一丸となって進めた勝利への飽くなき追求が、青学大を「史上最強軍団」に変えた。

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青学大の6区高橋(4年)の目から大粒の涙がこぼれた。完全優勝を決めた直後のインタビューだが、うれし涙ではない。「差を詰められてしまって、本当に申し訳ない」。復路では首位を1度も奪われなかったが、自身は区間8位。ただただ悔しかった。7区岸本(3年)は区間賞、8区佐藤(2年)は区間2位、9区中村(3年)と10区中倉(3年)は区間新の快走。高橋の悔し涙は青学の強さを象徴していた。

志の高さと選手層の厚さで難なくアクシデントも乗り越えた。7区岸本と8区の佐藤は当初、往路を走る予定だった。岸本は昨年11月の全日本後の故障で3週間走れず、12月の直前合宿も不参加。佐藤は10日前、痛み止め注射の副作用で38度の熱が出た。原晋監督(54)は「往路は厳しい。1日でも先送りした方がいい」と判断。岸本と佐藤の状態をギリギリまで見極め、当日変更で復路に投入した。岸本は区間賞、佐藤は区間2位の快走で応えた。「実力通りの走りをした。チーム全員で優勝してくれた」。まさに総合力の勝利だった。

昨年の失敗を糧に、チーム一丸となって強さを追求した1年だった。当時エースの神林勇太が直前に故障。精神的な支柱を失い、一気に動揺も広がった。往路12位と出遅れ、総合4位で連覇を逃した。

「神林の穴埋めができず、チームはもろく崩れた。その反省を生かし、誰がどう使われて走っても、能力関係なく走る。この1年は層の厚さを強化する。今年は組織力で勝負する」

昨春から練習スケジュールを1カ月分、前倒しした。「成果が早く出て、全体的にレベルが上がった」。手応えをつかむと、設定タイムを上げた。「4連覇した当時の設定タイムではもう遅れてしまう。我々も同じような練習をやっているようでは退化する」。あまりの負荷に「こんなのできっこない」。選手から悲鳴も上がったが、監督は無視。結果、自己ベストを更新する選手が続出した。

メンタル面でも昨年の反省を生かした。エース神林に頼りすぎて自滅した上級生を中心に、勝ち切る意識が強くなった。記録会では、常に集団の先頭でレースを進める選手が増加。裁量に任される「各自ジョグ」の時間も例年以上に増えた。食事の時間を遅らせてまで走り込む選手もいた。各選手から依存心が消え、自覚が芽生えた。

原監督は「安全パイのレースも考えられたが、学生自ら区間新を狙うとやってくれたので、(大会記録を)更新できた。自律するチームになった」と成長に目を細めた。そして「パワフル大作戦、大成功!」と高らかに勝利宣言した。【近藤由美子】

◆監督別優勝回数メモ 箱根駅伝を主催する関東学生陸上連盟の公式記録によると、総合優勝をした各大学の監督が明記されているのは64年40回大会以降。その記載によると、最多は45回大会から5大会連続優勝を含む8回優勝した日体大の岡野章監督だ。続くのが今回の青学大・原晋監督と、順大・沢木啓祐監督の6回だ。現役監督では、駒大の大八木弘明監督、東洋大の酒井俊幸監督が3回の優勝を数える。

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