【ユージン(米オレゴン州)=佐藤礼征】女子で日本勢唯一の参加となった松田瑞生(27=ダイハツ)は、19年ドーハ大会7位の谷本観月に続く入賞に、あと1歩及ばなかった。2時間23秒49の9位。40キロ手前で8位選手と1秒差に迫ったが届かず、レース後は涙を浮かべた。日本勢では一山麻緒(資生堂)と新谷仁美(積水化学)が新型コロナウイルスに感染して欠場。ゲブレシラシエ(エチオピア)が、2時間18分11秒の大会新記録で優勝した。

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両膝に手をついて10秒間、顔を上げられなかった。松田は目を真っ赤にして引き揚げると、山中美和子コーチに「泣かなくていいよ!」と励まされた。入賞まで15秒差の9位。日本勢では世界陸上で過去最高のタイムだったが、満足とは程遠く感じていた。「悔しいです。期待に応える走りができず本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」と謝罪した。

先頭集団の10キロの通過が、過去最高というハイペースな展開だった。1周14キロの周回レース。松田は1キロ3分20秒前後のペースを刻み、好機を待った。

単独走が続く中で、ラスト1周(28キロ過ぎ)から順位を押し上げていく。抜き去ることを意識した。「1人抜いても後ろがついてくる。その人の後ろについていけば、どんどんペースが下がるだけ。いけるところまで攻めていった」。12位からそれぞれ30キロ、35キロ、37キロで1人ずつ抜いた。40キロ手前で8位と1秒差。背中が遠い。抜けば入賞圏内に入ると分かっていたが「ずっと全力で、ラストの足は残っていなかった」。最後は引き離された。

日本勢で唯一の出走となり、期待を一身に背負った。直前に一山と新谷が新型コロナに感染した。4カ月前の3月末に代表に内定。松田は米アルバカーキで、約2カ月間の高地合宿に取り組んできた。準備を積み重ねたからこそ、レースに立てない2人の無念さを、誰よりも感じている。「出れなかった選手の悔しさは、一番私が分かっていると思う。出られない全ての選手の気持ちを背に走りました」。

昨夏の東京五輪は代表補欠にとどまり、世界への思いは強まっていた。「また世界の舞台に戻って結果を出したい」。重圧と闘いながら完走した27歳の夏。経験を必ず糧にしてみせる。