男子35キロ競歩で川野将虎(23=旭化成)が、2時間23分15秒で銀メダルに輝いた。序盤から2位集団につき、最後は東京五輪金のマッシモ・スタノ(イタリア)に敗れたものの、堂々の2位。大会初日に金、銀メダルを獲得した男子20キロ競歩に続き、50キロ競歩を引き継ぐ形で生まれた新種目でも“競歩大国”の威厳を示した。

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川野は虎視眈々(たんたん)とタイミングを狙っていた。「勝負はラスト10キロ以降。前半は力を残すことをテーマにやっていた」。スタートから2位集団につき、先頭を“追歩”した。21キロ過ぎで追いついた川野含む4人は1人、また1人と脱落していく。33キロ付近でスタノとの一騎打ちになったが、前には出られない。1秒差でフィニッシュすると倒れ込み、アスファルトをたたいて悔しがった。

6位入賞した東京五輪では悔しい経験を味わった。ゴール後に熱中症で全身がけいれん。万全の状態で臨めず、自国開催でのメダルを逃した。それだけに「(銀メダルは)光栄なこと」と爽やかな笑顔を見せた。

今年1月には極度の貧血に苦しみ、調整が遅れた。東洋大時代から指導を受ける酒井瑞穂コーチから食事指導を受けて、徐々に克服。「スタミナ練習もスピード練習も十分に準備してきた」と胸を張った。

前身の50キロ競歩は日本勢にとって世界選手権で3大会連続メダルを獲得した伝統の種目だった。「今の日本の競歩があるのも歴代の先輩方のおかげ。バトンをつなげて良かった」。1秒差の敗戦。「あと1秒が本当に心の詰めの甘さ」。来年以降の世界大会でこの借りを返す。

◆川野将虎(かわの・まさとら)1998年(平10)10月23日、宮崎・日向市生まれ。名前の由来は寅(とら)年生まれで「虎」の字が決まり、長尾景虎(上杉謙信)と同じ「景虎」も有力候補だったが、最終的には「将虎」に。静岡・須走小では柔道を習い、須走中では卓球部でシェークハンド。社会人1年目の東京五輪では50キロ競歩に出場して6位入賞を果たした。178センチ、62キロ。