箱根を経験しているからこそ、ブレずに決断した。第99回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)へ、55年ぶりに出場する立教大が18日、埼玉・新座市のキャンパスで取材会を開催。中央大(中大)時代に4年連続で箱根路を駆けた上野裕一郎監督(37)は、「平等であることを大事にする」という方針のもと、温情を排し、出走エントリー16人を選んだ。1人1人の思いが揺れる中、2週間後に号砲は鳴る。

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10日に発表された出走エントリー16人。立教大は全21チームで唯一、4年生の選出がゼロだった。

18年12月に就任した上野監督は、現3年生の代から勧誘活動を始めた。1万メートルやハーフタイムのチーム内順位は、3年生以下が1桁台を占める。

実力重視のメンバー選出。指揮官は「4年生が引っ張ってくれた」とたたえたうえで、静かに切り出した。「中大の時、4年生を選んで失敗しているのを見てきたので」。選手時代から、温情采配が命取りになることを目の当たりにしてきた。

理由はもう1つ。「実力で判断することは平等だから」というものだ。どの選手も学費や寮費は一律。同じ環境で4年間を過ごす。そうである以上、「力があれば走る。なければ外れる」のは当然。「チームが納得するか」を最重要視した。

4年生のミラー千本真章(ちもと・まっくす)主将は「今は全然、切り替えられているので」と控えめに笑い、「全員が納得している」と繰り返した。ただ、その一方で、「自分たちは何も残せなかったのか」と無情な思いにも駆られたという。どれも偽りのない言葉。胸の内は揺らぎ続けている。

下級生は、最上級生の思いをくんで走る。入学当初から、4年生の支えを受けてきたという国安広人(1年)は「4年生のためにも、ただ走るだけではなく、結果を出したい」と意気込む。言葉に迷いながらも、真剣な表情でそう言った。自分の走りで、恩を返そうと思っている。

単純化できない思いが、交錯している。55年ぶりにつなぐ江戸紫色のタスキ。あと2週間で、その幕が開ける。【藤塚大輔】