24歳の西山和弥(トヨタ自動車)が、初マラソン日本最高の2時間6分45秒で日本勢トップの6位で入った。同じく24歳で初マラソンの池田耀平(花王)と競り合って好走。前回大会で星岳が記録した同最高を46秒も更新し、日本歴代でも7位タイの好記録となった。8秒遅れで7位だった池田とともに、24年パリ五輪代表選考会の「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(10月15日、東京都内)出場権を獲得。初マラソン勢が躍動した。

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西山が、激しく池田と競り合った。37キロ過ぎの日本人トップ争い。互いに意識し合う。ただけん制し合ってタイムを落としては意味がない。2人そろっての2時間6分台突入に向けて「(池田に)背中で意思表示した」と40キロで一気にギアを上げた。顔を左右に振るようになった池田を振り切って、背筋をすっと伸ばした美しい走りでそのままゴール。初マラソン日本最高、日本歴代7位タイのタイムを出して「うれしい、それだけです」。この言葉に全てが詰まっていた。

好記録の裏には、大学時代、箱根駅伝を走った池田ら同学年ランナーの存在があった。ライバルでありながら、給水所でドリンクを取り損ねたことに気づいた時には、自分のボトルを手渡した。西山がマラソン挑戦を決めたのも、同学年の星の前回大会優勝を見たことがきっかけ。「マラソンっていいなと思ったんです」。刺激をくれる同じ98年生まれの仲間に感謝した。

東洋大時代は箱根駅伝で1年から2年連続1区区間賞。だが「ここ数年は苦しい思いでいた」。昨年9月には英国で前日本記録保持者の大迫傑と同じハーフマラソンに出場して「これじゃだめだ」と発奮のきっかけにした。上下の動きを少なくし、重心移動の力を使うフォームに改善した。

8秒遅れでゴールした池田も、星の従来記録を上回る走りだった。ただ、西山に振り切られたシーンを「急激にきつくなって、後ろに食らいつくのが精いっぱいだった」と悔やんだ。35キロまでは余裕もあったが、勝負どころの38キロすぎで体が一気に悲鳴を上げた。「いいタイムが出たと思うが、勝負にこだわってやってきたので」。同じ所属のケニア人選手とのスピード練習で競ってきた成果を初マラソンで発揮したが、満足感はなかった。

躍動した初マラソン勢は早くも次の舞台、MGCを見据えている。西山が「マラソン日本代表が夢だった」と言えば、池田は「日本人選手で2番、しかも西山選手に負けたのはとても悔しい」。同世代ランナーたちは刺激し合いながら、世界に向かって突き進んでいく。【竹本穂乃加】

◆西山和弥(にしやま・かずや)1998年(平10)11月5日、大阪府門真市生まれ。5歳から群馬で育つ。中1で競技を始める。東農大二高から進んだ東洋大で4年連続箱根駅伝に出場。1、2年時に1区区間賞を獲得した。22年4月に結婚。167センチ、52キロ。

◆池田耀平(いけだ・ようへい)1998年(平10)6月22日、静岡・島田市生まれ。島田高から進んだ日体大では箱根など3大駅伝で活躍。21年にカネボウ(22年10月から花王に移管)に入社。今年1月の全日本実業団駅伝では4区区間賞。166センチ、49キロ。

▽2時間6分1秒で男子優勝のハイレマリアム・キロス(エチオピア) (2位のウガンダ選手と)しれつな競争になったが、スパートをかけて勝てた。自己ベスト(2時間4分41秒)の更新を目指したい。

▽2時間7分35秒で12位の川内優輝 昨年(2時間8分49秒)より1分以上タイムを縮められた。30キロで前に出すぎなかったのが良かった。