侍ハードラーが帰ってきた!

 陸上男子400メートル障害の日本記録保持者、為末大(32=a-meme)が17日、石川・金沢市営陸上競技場での記録会に参加し、08年北京五輪以来、2年8カ月ぶりに同種目を走った。強風の影響でタイムは51秒26と平凡だったが、世界レベルのハードリングは健在。故障に悩まされ続けた為末は「全力で走れたことがうれしい」と収穫を手にした。今季目標とする8月の世界選手権(韓国・大邱)出場へ、確かな第1歩を踏み出した。

 侍の刀は、さびついていなかった。1台目のハードルに足をこすらせたが、以降は滑らかなハードリングで加速する。世界選手権で2度銅メダルに輝いた足さばきは健在だった。昨年インカレ5位の西本(金沢星稜大)ら「刺客」の大学生3選手を寄せ付けず、トップでゴールへ飛び込んだ。掲示タイムは51秒26。強風にさらされる厳しい条件とあって記録こそ伸びなかったが、1周走り切れた充実感がみなぎっていた。

 為末

 (記録は)50%、それより低いかも。それでも全力で走れる、痛みがなく走れたのがうれしい。すごく前向きな気分です。ハードリングは体が覚えていました。自転車をこぐのと同じで(体が)忘れない。

 50秒台前半の設定タイムは、「大敵」に遮られた。シドニー五輪での転倒、アテネ五輪準決勝での敗退も強風にあおられたものだ。悪条件をベテランらしく冷静に判断し、レース展開を変更した。5台目までハードル間を13歩で行く予定を、高校以来の14歩に切り替えた。勝負に出ず、しっかりまとめてみせた。

 同種目の元五輪代表で、04年アテネ五輪まで日本代表コーチとして為末を指導した金沢星稜大・大森重宜教授は「タイムにがっかりしているかもしれないが、よかった。状況次第で48秒台も狙えるし、日本選手権でも優勝候補になるのでは」と言う。日本選手権出場の標準記録(50秒80)を破れなかったが、今後への期待は膨らんだ。「次が最後の五輪になる。自分は決して逃げない、満喫したい」。為末のロンドンロードが、静かに幕を開けた。【佐藤隆志】