一般女子8キロで出水田真紀(19=立大)が29分9秒で日本人トップの2位に入った。

 水しぶきならぬ「泥水しぶき」が勢い良く上がった。強い雨で、芝コースの至る所に泥水がたまっていたが、「この年で、思い切り水たまりに入っていけることもない」と、あえて足を突っ込んでいった。紫のユニホームを茶色く染めながらゴールし、「結構楽しかった」と無邪気に喜んだ。

 「母を超える選手になりたい」と力強い。有紀さん(旧姓・田村)は80年代に活躍した女子長距離ランナー。美貌も注目されたが、88年ソウル五輪の選考会で松野明美に敗れ、標準記録にも5秒届かず、五輪は届かなかった。高校時代、母が監督を務める白鵬女高で走りながら、「出られなかった五輪に出る」と誓った。

 そのために自立も図った。実業団からの誘いを断り、「自分で練習や勉強のマネジメントができるようになりたかったから」と強豪ではない立大に進学。昨年7月のトラック完成まで練習場所を転々とするような環境に身を置き、練習を自ら工夫するなど自立を心がけた。この日、あえて水たまりを走った理由は「滑らないから。ぬかるみの方が滑る」。冷静な判断力は自立の成果だろう。

 幼少期、よく母に連れられて試合会場にいった。だから、「逆に見ていてやりたくない」と思っていた少女は、12歳で競技を始めるとめきめき頭角を現した。「最終的にはマラソンに出たい」。五輪で戦い、母を超えることが最高の親孝行になる。【阿部健吾】