いよいよ東京オリンピック開催まで1カ月あまりとなった。さまざまな議論がなされる中、トライアスロンもオリンピックに関わるポイントレースが全て終了した。

トライアスロンは個人競技と思われがちだが、今大会から男女の個人種目(オリンピックディスタンス=合計51.5キロ)に加え、男女混合ミックスリレー(女子-男子-女子-男子)が採用された。1人がスイム300メートル、バイク7キロ、ラン2キロ(レースによって多少異なる)をこなし、それをリレー形式でつなぐ競技だ。

個人競技とは違い、チーム内の戦略はもちろんのこと、この距離に対応できる能力も必要だ。しかしオリンピックでは、個人種目で選ばれた選手がミックスリレーのメンバーとなる。すなわち、両方の距離を巧みにこなす必要があるのだ。

国によってはリレーにかけている国もあるくらいで、トライアスロン競技に新たな風が吹くに違いない。


2018年アジア大会の混合リレーで優勝した日本チーム(ロイター)
2018年アジア大会の混合リレーで優勝した日本チーム(ロイター)

個人種目の代表枠を決めるのは、オリンピック・クオリフィケーション・ランキング(OQR)の順位だ。対象期間は2018年5月~2021年6月(コロナ禍のため延長)。30位以内に同じ国の選手が3人入れば、その国は最大3枠を獲得できる。

リオ五輪までは個人種目のみだったので、3人出られる国が8カ国あった。しかし東京五輪からミックスリレーが採用されたことで、それが4カ国に減り、以前にも増してハイレベルな枠取り争いになった。

ランキングの獲得ポイントは選手の勝ち負けだけでは判断することが困難で、とても分かりにくい。緻密な計算も必要となる。

近年、女子はアメリカとイギリスが非常にレベルが高く、30位以内に5人ずつ入った。続いてイタリアが3枠を確保。残り1カ国の座をオーストラリアとフランスで争う形となった。

日本は開催国枠で2枠が確保されている。女子は3枠目を目指して奮闘したが、世界の壁は5年前より高くなっており、かなわなかった。

男子はフランス、スペインの選手層が厚く、30位以内に4人を送り込んだ。さらに近年異常な強さを見せているノルウェーが3枠確保。残り1カ国をオーストラリアとアメリカで争う形となった。

日本男子は戦略としてミックスリレーで勝負をするという方針であったため、OQRは重視されていなかった。


この状況の中、最後まで諦めず3枠獲得にこだわった国はオーストラリアだった。女子はランク外だった選手が最後に8つランキングを上げ、29位に。さらに男子もランク外から5つ上げて28位に滑り込んだ。

オーストラリアと言えばトライアスロンの大国だ。その意地とプライド、執念、経験が垣間見られる最終ランキングとなった。


東京五輪代表に選出が有力な高橋侑子
東京五輪代表に選出が有力な高橋侑子

ちなみに30位以内に入った選手がそのままオリンピック代表になれるわけではない。代表選手はあくまでも各国の選考基準によって決定される。

日本代表は、来週決まる予定だ。選考基準は第1優先から第6優先まで決められている。

女子は第5優先をクリアしている高橋侑子選手が有力候補だ。リオ五輪では悔しい思いをし、それを乗り越えて日本のエースに成長した。もう1枠はリレー重視の選考になると思われる。

男子も同じく第5優先をクリアしている小田倉真選手が有力候補に名乗りをあげている。残り1枠は同じくリレー重視の選考になるだろう。

どんな形であろうと、選手はここまで全力で戦い抜いたと思う。東京オリンピック代表になる選手は、ともに競った全選手の思いを込めて本番を戦ってほしい。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)