10月20日から23日にかけて、飛び込みの「FINAワールドカップ2022」が開催された。会場となったのはドイツのベルリン。日本からは今大会への公式派遣はされず、出場したい選手は自費での参加となった。そこで手を挙げた選手が1人だけいた。三上紗也可(日体大)だ。

三上が出場した理由は、「7月の世界選手権を終えて、もっと国際大会の経験を増やさないと成長できない」と思ったからだった。

出場した女子板飛び込みは、予選を3位で通過。上位2人は強豪国である中国の選手だった。これは国際大会でよくあるシチュエーションだ。

予選を終えて1位との差は33.30。1本1本の完成度を少しずつ上げられれば、届く範囲の点差である。三上の難易度を考えると、完璧な演技をすれば、金メダルも夢ではない。私も決勝への期待を膨らませ、心の中で声援を送った。

そして決勝。全体的に大きなミスはなかったものの、彼女本来の実力は発揮できず、予選の順位を守り抜いた形での銅メダル獲得となった。

今大会を終えての感想を聞いてみると、「国内大会のシーズンが終わって間もなく今大会が行われたので、気持ちの面で調整することがとても難しかった。メダルを獲得することは出来たが、試合内容は自分のベストに程遠く、悔しい気持ちが大きい。これまでの試合はメダル獲得を目指した飛び込みだったが、今大会は『金メダル』を目指した飛び込みを意識した。これまでと試合に向かう気持ちが変化し、今回はうまく対応できなかったが、とても良い経験になった」と話した。

そして、今後について尋ねると、「まずは来年、福岡で開催される世界選手権で、1歩でもパリオリンピックに近づけるよう、これからたくさんの国際大会を経験し、1つ1つの試合をコツコツと丁寧に積み重ねていきたい。そして、パリオリンピックの舞台で自分史上最高の演技が出来るように努力したい」と力強く答えてくれた。

今回のワールドカップには各国のトップ選手があまり参加しておらず、参加人数も少なかった。試合前に「それはチャンスだね!」と三上に言うと、「チャンスをつかめるように頑張ります!」と、とても前向きで頼もしい言葉が返ってきたのが印象的だった。

私も経験があるが、国際大会という大きな舞台に選手1人で参加するのはとても心細い。試合が近づき緊張感が高まった時に、仲間がいるのといないのでは、気持ちの落ち着き方が全然違うのだ。心の不安定はパフォーマンスにも大きく影響する。そういった中で、今大会での銅メダル獲得というのは、とても素晴らしい結果だ。

2019年の世界選手権で5位に入り、昨年の東京オリンピックにも出場した三上。今大会でもまた、経験値を上げ、実力に磨きをかけたに違いない。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)