第19回アジア大会、中国・杭州。飛び込み競技は9月29日から10月4日まで試合が行われた。

今大会に参加したのは13カ国、66人の選手たち。日頃の練習の成果を存分に発揮し、大いに会場を盛り上げた。

初日に行われた女子10メートルシンクロ。日本からはおなじみの板橋美波(滋賀県スポーツ協会)、荒井祭里(JSS宝塚)ペアが出場し、みごと銀メダルを獲得。1試合目からのメダル獲得という素晴らしいスタートを切った。

私も日本の帯同審判として参加しており、彼女たちの試合でもジャッジに入っていた。

当たり前だが、ジャッジは全ての選手に公平でなくてはならない。その心得は承知しながらも、心の中では自国の選手を応援する気持ちでいっぱいだった。

試合の約1カ月前に行われた日本選手権では、正直2人の同調性が課題のように感じた。そこを今回はどのように調整してきたのか、個人的にはとても楽しみにしていた。

この種目の参加国は5カ国。他国のレベルを見ても、日本は充分メダルを狙える位置にいた。

今大会では、シンクロ種目は決勝のみ行われた。一発勝負という緊張感の中、1本目から順調に点数を重ね、大きなミスもなく最終演技を終えた。

結果は中国に続く銀メダルを獲得。心配していた同調性は良くなっていた。しかし水切れがイマイチ。世界でメダルを獲得するためには、300点が1つの目安となる。今回は290・04点。あと少しだ。まだ2月の世界水泳ドーハ大会までには時間がある。来年のパリ五輪出場に向けて、ベテラン2人の追い上げが見どころである。

そして最終日。個人種目では、女子3メートルで三上紗也可(日体大)、男子10メートルでは玉井陸斗(JSS宝塚)が期待通りの素晴らしい演技を見せ、共に銅メダルを獲得した。

飛込競技は各種目に各国2名ずつエントリーすることができる。そのため、アジアの中で最も強い中国が、上位2位を占めることはよくある光景だ。今大会においてもそうだった。

しかし近年では、三上や玉井など中国の一角を崩せるほどの実力のある選手も出てきている。今大会での演技を見ても、中国が危機感を覚えるような演技を何本もみせてくれた。きっと中国の伝統を破る日も近いだろうと期待している。

今シーズン最後の試合となったアジア大会。会場を埋め尽くす約9割が中国人応援団というアウェーの中、日本チームは3つのメダルを獲得した。しかし「あと一歩でメダル獲得」という悔しい種目もあっただけに、まだ十分に伸びしろはあると感じた。

演技の精度も上がってきている選手も多く、来年に向けての意気込みも十分だ。今後がまた一段と楽しみになる試合を見せてくれた選手たちには敬意を表したい。

私自身もジャッジという立場で参加し、選手の時とは違う視点で様々な発見があった。アジア大会という独特の空気感もあり、毎試合の1本1本の演技に手に汗握るほど緊張しながらのジャッジだった。たまにミスもあったと思うが、これもまた経験。きちんと今後に生かしていきたいと思う。

(中川真依=北京、ロンドン五輪代表)