男子テニスのATPワールドツアーは、11月8日に閉幕したパリ・マスターズで、15年のレギュラーシーズンを終えた。残すのは年間獲得ポイント上位8人だけが出場できる同月15日開幕のATPワールドツアー・ファイナル(ロンドン)だけだ。世界8位の錦織圭(25=日清食品)は、2年連続で、同ファイナルの出場権を得た。

 昨年は、9月の全米準優勝から、マレーシアオープン、楽天オープンと2大会連続優勝。パリ・マスターズで4強に入り、出場権を獲得した。初出場の同ファイナルは、1次リーグを2勝1敗で突破し、準決勝でジョコビッチにフルセットで敗れたが、錦織フィーバーは頂点に達した。

 しかし、昨年の驚異的な後半があるだけに、ぜいたくすぎるが、今年は、尻すぼみの感はぬぐえない。それでも世界8位なのだから見事としか言いようがないが、まさかの全米初戦敗退以降、勝敗よりも“すっきりしない”試合運びが続く。何が昨年と今年では違うのか。昨年と今年、そして今年の前半と後半を数字で比べてみた。

 14年は最終戦を含み、15年は最終戦前までの統計だ。勝敗数は14年が54勝14敗、15年が53勝14敗とほぼ同じ。しかし、大きく違うのは対トップ10の勝敗数だ。14年が11勝7敗に対し、15年は5勝8敗。特に14年は後半に7勝3敗で、15年後半の2勝3敗と大きな開きがある。最終戦で全勝優勝して、ようやく昨年と同じ対トップ10の勝敗数に並ぶわけだ。

 また、今年の全米以降は、大事なポイントでの勝負弱さが指摘されている。ブレークポイントやセットポイントを握った時などだ。本当にそうなのか。全米以降、デ杯を除き、相手のサービスゲームで握ったブレークポイントは80。獲得したのは19で、獲得率は約24%だ。今年全般の約42%より極端に落ちる数字で、勝負弱さの指摘は統計を見る限り当てはまる。

 実は、統計を見ると、昨年と今年で、錦織の戦い方が変化していることが分かる。今年は、1試合の平均サービスエースの数が昨年より0・6本増え、第1、第2サーブでの得点獲得率も昨年より上回っている。確実に、課題のサーブを強化した成果が上がっていると言えるだろう。

 逆に、リターンでの得点獲得率は、わずかだが下がっている。特に、15年後半の落ち込み具合は大きい。その中で、相手の第2サーブに対するリターンで、15年前半に比べ、5%も得点を減らしている。これが大事なポイントを取れない最大の原因ではないだろうか。

 錦織と言えば、これまでリターンが代名詞だった。元世界1位のアガシ(米国)と並び称されるリターンの名手と、世界的にも認知されていた。自らのサービスゲームを1回落としても、相手のサービスゲームを2回以上破ることで、勝利に結びつけてきたのだ。

 しかし、今年は、数字だけを見ると、サービスゲームをキープする王道のテニスに変化しつつある。リターンの得点獲得率が落ちたのは、錦織のリターン対策として、対戦相手がリスクを承知で勝負してきたこともあるだろう。それと、これは推測だが、サーブの強化で、リターンへの意識が少し薄くなったのではないだろうか。

 サーブの得点獲得率が上がり、リターンの得点獲得率も上がれば、鬼に金棒だ。しかし、そううまくいかないところがスポーツなのだろう。ただ、錦織のサーブは、どんなに強化しても、サービスダウンと背中合わせだというのは覚悟しておいた方がいい。その覚悟が、リターンへの集中力を増すのだと思う。

 15日に最終戦ATPツアー・ファイナルが幕を開ける。2年連続で出場権を得たことだけでも十分に評価に値する。今年も残り1大会。勝敗以上に、錦織らしい心身すべてを使ったプレーが見たいと思っている。そして、それが来年につながる。


錦織圭
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