アスリートの生い立ちや人生のターニングポイントを聞く「わたしのツクリカタ」。ジャパンサイクルリーグ(JCL)は3月25日カンセキ真岡芳賀ロードレース、26日カンセキ宇都宮清原クリテリウムで開幕します。開幕に合わせ、宇都宮ブリッツェンに新加入し、いきなり主将に任命された谷順成(28)に話を聞きました。全3回、お送りします。偶然手にした小説がきっかけでこの世界に飛び込みました。(取材・構成=沢田啓太郎)
◆谷順成(たに・じゅんせい)1994年8月4日、岐阜市生まれ。各務原高から関西大に進学し、卒業後の2017年にヴィクトワール広島に入団。20年から那須ブラーゼンで活躍し、今年から宇都宮ブリッツェンに移籍。身長171センチ、体重68キロ。
-大学時代に自転車のロードレース小説を読んだのが競技を始めたきっかけというのは本当ですか
谷 サクリファイスという小説があって、近藤史恵さんかな、書いたの。読書がもともと好きで、関西大の本屋で偶然手にしたんです。別に自転車に興味があったとかではなくて、手に取った小説がそれだった。
-何にひかれて手にしたのでしょうか。本のタイトルですか
谷 あ~、なんですかねえ。よく覚えてないんですけど、ハッハッハ。もう昔すぎて。
-何年生の時ですか
谷 1年生の時です。当時はサッカーのサークルに入って楽しくやっていたんですけど、秋くらいですかね、9月か10月くらいにその小説を読んで。多くの人が自転車競技イコール競輪というイメージだと思いますが、僕もそうでした。小説で初めてロードレースを知って、おれ、向いてるのかなっていう感じで始めました。
-高校まではサッカーをやられていた
谷 もともとバレーボールから入って、途中からサッカーに変わって、自転車ですね。
-しかし運命的な出会いですね
谷 そうですねえ、本当。偶然(関西大に)自転車部があったというのも大きくて。なかったらたぶん、やってないですね。
-その小説のどの部分が響いたのですか
谷 物語としてはミステリーで、青春ものという感じではないんですけど。ロードレースのことを全く知らずに読みましたが、難しい自転車の用語なんかもすっと入ってくるように書かれていて。書き方もうまかったですし、内容が本当におもしろくて。確かツアー・オブ・ジャパン(※)のことを書いていたんですよ。自転車のロードレースってこうなんだというイメージがついて、実際にツール・ド・フランスとかユーチューブでみて、ああ、おもしろいなって。
-どういうあらすじなのですか
谷 ネタバレになってしまうんですけど、自転車レースというのはエースとアシストがいて、全員が自分の成績を狙うのではなく、エースのために走る、それがいわゆるサクリファイス、犠牲ですよね。そういう感じかと思ったら、最後はもっと深い意味でサクリファイスだったという話です。すごくおもしろかった。
-ロードレース選手にはいろんな役割があり、駆け引きがあることにひかれたということですか
谷 自分に向いていると思ったのが最初です。チーム戦の部分は当初はそうでもなかった。
-向いているとは?
谷 バレーボールもサッカーも結構真剣にやっていたので、もともと体力はありました。バレーを始めたときから日本一になりたいっていう目標があって、それをもう1回、自転車競技で追いたいなあと思って。(つづく)
※ツアー・オブ・ジャパン=UCI(国際自転車競技連合)公認の国際レース。今年は5月21~28日に行われる。堺、京都、いなべ、美濃、信州飯田、富士山、相模原、東京の8ステージ。
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