痛みと引き換えに小塚が選んだソチへの道
- 2大会連続の五輪出場を狙う小塚
8位に終わった10年バンクーバー五輪から3年、小塚崇彦(24=トヨタ自動車)はいま、ケガと向き合う日々を送っている。祖父、父ともに日本を代表するスケーターだった「日本フィギュア界のサラブレッド」は、苦難を乗り越えて2度目の五輪に向かう。
我慢できないほどの痛みが体を貫いたのは、12年冬だった。12月下旬の全日本選手権直前から右足首の腱(けん)の痛みがあり、十分な練習時間が取れなかった。結果は5位で、5季ぶりに世界選手権代表を逃した。その後も回復が長引き、西洋から東洋医学まで通い、2月中旬に出された結論は「先天的な股関節の問題」。生まれつき大腿(だいたい)骨の先端部を覆う骨盤側のくぼみが浅く、影響が足首まで襲っていた。
決断は4月。「ソチがある。出たいし、メダルが欲しい。痛みと向き合ってやるしかなかった」。手術をすれば、完治まで半年。2度目の五輪となるソチへ、可能性を消したくなかった。だから痛みと引き換えに、道を残すことを選んだ。
類いまれな滑り
- 全日本選手権でも小塚のガッツポーズを見られるか
4月中旬からは、米国で2カ月半の長期合宿。トレーナーを同行し、毎日1時間以上のケアを施す毎日だった。痛みが消えることはなかったが、ソチへの情熱も消えることはなかった。
迎えた五輪シーズン。グランプリ(GP)シリーズ第1戦スケートアメリカは6位。フリーでは4回転ジャンプが2回転となるミスが出るなど低得点に甘んじた。「もう痛みは大丈夫です」と気丈に話したが、影響を感じさせた。続く第3戦中国杯では3位で表彰台に上がったが、4回転の不安定さは変わらず。得点にも納得できず、「練習をやるしかない」と決意固そうに語気を強めた。
11年世界選手権で銀メダルに輝いたスケート技術は、世界でも一目置かれている。幼少期から育まれたフィギュアの神髄を感じさせる類いまれな滑りは、大一番の全日本選手権で復活するのか。ケガと戦ってきた苦難の日々の頑張りに、真冬の埼玉で1つの答えが出る。【日刊スポーツ・阿部健吾】
- ◆小塚崇彦(こづか・たかひこ)
- 1989年(平元)2月27日、名古屋市生まれ。5歳で競技を開始。中京大中京高を卒業後、トヨタ自動車に所属しながら中京大体育学部を経て、2011年には同大大学院体育学研究科体育学専攻博士前期課程に進学。06年世界ジュニア選手権で高橋大輔、織田信成に続く日本男子3人目の優勝を達成。10年バンクーバー五輪8位。11年世界選手権2位。父嗣彦さんは全日本選手権3連覇、68年グルノーブル五輪代表。母幸子さんも全日本アイスダンス2位1度、3位1度の実績を持つ。170センチ、60キロ。
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