世界5位の錦織圭(25=日清食品)が、ついにビッグ4の一角を崩した。世界15位のアンダーソン(南アフリカ)に6-2、3-6、6-3で勝ち、2大会連続で決勝に進出。2日発表予定の最新世界ランクで、95年11月にクルム伊達公子が記録した日本最高位の4位以上となることが確定した。また、クルム伊達と並んでいたツアーシングルス優勝回数も、単独日本最多9度目に王手をかけた。2月28日午後9時(日本時間1日正午)以降に始まる決勝で、同9位のフェレール(スペイン)に勝つと、世界3位になる可能性もある。

 夢の世界王者への序章が幕を開けた。世界4位確定のマッチポイントは、6本目のサービスエースで決着をつけた。今大会初のフルセットともつれたが、錦織は「最後は自分のプレーを取り戻して勝ちをつかみ取れた」と、タフな精神力で大きな勝利をものにした。

 第1セットは完璧だった。第2セットに入ると「原因は分からない」という不調に陥った。第1サーブが入る確率が29%と急降下。最終セット第1ゲームは、自分のサービスゲームを落とし、ピンチを迎えた。それでも「いつか流れは来ると思っていた」。すぐに1オールに追いつき、4ゲーム連取で勝ちにつなげた。

 長年、男子テニス界はジョコビッチ、フェデラー、ナダル、マリーのビッグ4が君臨してきた。錦織は、昨年9月の全米で準優勝。4大大会で、その一角を崩した。そして、世界ランクでも風穴をあけた。過去5年で、ビッグ4以外で世界4位以上になったのはワウリンカ、フェレールの2人だけだ。

 今年の全豪で、錦織は「5位と4位では大きな違いがある」と話した。4位になれば、4大大会で上位4シードとなり、準決勝までランク下の選手との対戦となる。全豪では準々決勝でワウリンカに敗退。4シード以上になれば、その壁を破ることが、わずかながら楽になる。

 しかし、世界ランクという数字の魔力に、一喜一憂はしたくない。「本当に申し訳ないけど、どうも思っていない。どうせ上がるし下がるしといったところ」と、外野の騒音を冷静に受け止めている。世界ランクで、自分に重圧をかけることだけは避けたいというのが本音だろう。

 だからといって、錦織が勝利への手を緩めるわけではない。子供のころ、トランプで負けが見えると、机をひっくり返してチャラにした負けず嫌い。ツアー通算9勝目が目前だけに「新しい優勝トロフィーを手に入れたい」。その勝利の積み重ねが、いやが上にも世界ランクへの上昇につながっていく。

 ◆日本選手と世界ランク 現行のランキング制度前は識者が順位を付け、1933年に男子の佐藤次郎が最高の3位を記録した。1年間の成績を対象に換算する現在のシステムになってからは女子で95年にクルム伊達が4位。杉山愛は2004年に8位をマークした。男子は松岡修造が92年に記録した46位が最高だった。

 ◆世界ランキング 過去52週間に出場した上位18大会の合計点の多い順で決まる(ツアー最終戦に出場した場合は、19大会目に数える)。各大会で獲得した得点は、52週間後に消滅する。

 錦織の2月23日付の合計点は5205点。今週は決勝進出で最少でも300点を確保。300点は上位18大会に入り、加算対象となる。同時に現在加算されている最低点の90点が消滅する。5205点に300点を加え、90点を引くと5415点。これが、2日の最少合計点だ。

 今週のドバイ選手権で敗退したマリーは、2日で合計5370点となり世界ランクが3位から5位に陥落。ナダルがアルゼンチンOPで優勝を逃し、錦織が優勝すれば、ナダルを上回って3位に浮上する。