宮里藍サントリー・レディース最終日の12日、山下美夢有が優勝し、セレモニーが終わり、大会アンバサダーでコースセッティング担当だった宮里さんが総括会見を行った。大会のピン位置でユニーク? な現象があったので質問した。

グリーンを左右2分割し、予選1Rは18ホールのうち、14ホールが左ピン。逆に2Rは14ホールが右ピン。かなり極端な振り分けだが、1Rはドローヒッター、2Rはフェードヒッター有利ととれなくもない。そこに意図はあったのか-。

「う~ん、それは正直に申し上げると、ほぼ偶然そうなった感じです」と、ばつが悪そうに笑った。

ピン位置はグリーン上のカップの場所だ。フェアウエー幅、ラフの深さなどに加え、グリーンの硬さ、速さを決めるコースセッティングでは最後の仕上げの要素。選手のコースマネジメントは基本的に「ピン位置からの逆算」で、例えばパー4なら右ピンの時は第1打はフェアウエー左サイド狙い。ガード・バンカーなどグリーン周辺の“わな”を避けやすいアングルを考える。ピン位置はそんな方程式の終着点だ。

今回のピン位置は、選手におおむね“好評”だった。「厳しい」としつつ「微妙なところに切ってある」と言う選手が多かった。「微妙」は、あるプロキャディーの言葉を借りると以下のようになる。

「例えば上りのパットでも、カップを過ぎて2ヤードないあたりから下りのスロープが入っているから打ち切れなかったりする。でも、アンフェアというわけじゃない。適当な狙いじゃダメだけど、ナイスショットを打てば、バーディーはちゃんと狙える場所がある。要はそれができるかどうか。今回はいい具合だったと思いますよ」-。

日本選手が「世界で戦える選手」になるために、最も有効な手段は米ツアー参戦だろう。選手層の厚さはもちろん、海外のコースは日本と違う。バンカー、池、クリークなどの効き具合は、日本のコースにないものが多いし、洋芝は強く、粘っこく、ボールが沈みがちになり、日本に多い高麗芝、野芝より処置が難しかったりする。

トーナメントコースとしてのポテンシャルが劣る日本にいながら、世界で通用するショット力を磨くにはどうすればいいのか? そう考えた時、コースセッティングへの全体的な努力は大前提だが、そんな中でもピン位置は最も即効性がある要素と言っていい。

宮里さんだけではない。国内女子ツアーでは一昔前から元トッププロが「セッティング担当」を務める大会が増えた。先駆けは看板大会・日本女子プロ選手権の岡本綾子。現在は塩谷育代、中野晶、山崎千佳代、諸見里しのぶ、茂木宏美らが工夫を凝らしている。大会の数カ月前から視察を重ね、グリーンキーパーらコーススタッフの協力を仰ぎ、プロの勝負に値するコースを目指す。その成果だろう。今季はサロンパスカップ、ブリヂストンオープンなど手に汗握る展開となった大会が多い。

さて、宮里さんの説明の続きを。

「4日間大会なら、グリーンを4分割して考えます。今回は昨年大会と区別化しようとイメージして決めていったら、たまたまそうなって…。ただ、あまりにも極端に分かれたな、勉強不足だなと。もう少し広い目で見ないといけない。来年の課題ですね」。ちなみに優勝した山下にこそっと「グリーン、硬かった?」と尋ねたそうだ。

元トッププロが長年の経験を踏まえ、頭をひねってピン位置を決め、選手に“答え”を求め、それが結果として選手の力量を引き上げる。今は低迷する男子ツアーでも当然、同様の動きはある。昨今の日本のゴルフ界では、そんなポジティブな流れが出てきた気がする。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ピッチマーク」)