笹生の偉業にまつわる話題を「笹生優花 全米女子OP V」と題して、3回連載する。

初回は、笹生の母の母国であるフィリピンの英雄で、プロボクシング6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(42)との関わりについて。母国で敬愛されるパッキャオは笹生にとって幼い頃からのヒーロー。今回の優勝を受け、パッキャオがSNSに祝福メッセージを投稿するなど、目標の存在に1歩近づく歴史的な勝利になった。

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笹生にとってパッキャオは特別な存在だ。9歳の時にゴルフ上達を目指して日本からフィリピンへ練習拠点を移すと、試合のたびに国民が熱狂する姿を目にした。フィリピンでの人気はすさまじく、レストランを貸し切っての観戦などは当たり前。「みんなすごかったですよ。私もついつい試合を見ちゃってました」。国民に元気と勇気を与える、真のヒーローだった。

そんな英雄に近づく今回の偉業。笹生の優勝を受け、パッキャオはインスタグラムに祝福の言葉を投稿した。トロフィーを持つ笹生の写真と共にフィリピンの公用語の1つであるタガログ語で「Mabuhay ka! Yuka Saso」(万歳! 笹生優花)と書き込んだ。続けて英語で「名門である全米女子オープンで世界最年少覇者としてフィリピンの偉大さを世界に見せました。私もあなたの勝利を祝うフィリピン国民の1人です。あなたを誇りに思っています」とつづった。全世界に持つフォロワー数は635万人。ボクシングや私生活以外の投稿をめったにしない王者からの、これ以上ない祝福となった。

笹生へは幼い頃からスイングなどを参考にしてきたマキロイ(英国)もSNSでメッセージを贈るなど、憧れのスターからの賛辞が相次いで届いた。今大会は8歳でゴルフを始めた際に唯一知っていたという10年大会覇者のポーラ・クリーマーとも同じ舞台に立った。

いつかパッキャオのような英雄になるのか-。以前、笹生に尋ねると「英雄にはそこまで…」と恥ずかしそうに首をかしげ「自分はゴルフで世界一になって、静かにしておきたいです」と笑った。まだ始まったばかりの19歳の少女の物語は、これからも多くの人々に勇気と感動を与えていくだろう。【松尾幸之介】

◆マニー・パッキャオ 1978年12月17日、フィリピン生まれ。95年1月プロデビュー。98年12月にWBCフライ級王座獲得。その後スーパーバンタム、スーパーフェザー、ライト、ウエルター級の世界王座を獲得。10年11月にはWBC世界スーパーウエルター級王座決定戦を制して、史上2人目の6階級制覇。8月に米ラスベガスで約2年ぶりの試合を行うことも発表。母国では政治家としても活躍。愛称はパックマン。身長169センチ。