女子の山形商が春の屈辱的な敗戦をバネにして、06年から10年連続で初戦を突破した。英明(香川)に圧勝。6月の東北高校選手権決勝で第4クオーター(Q)に20点差を逆転された経験から、第2Qで17点リードしても攻撃の手を緩めず、最後は29点差をつけた。

 あの6カ月前を思い出した。35-18で迎えたハーフタイム。高橋仁監督(58)がゲキを飛ばした。「この17点で逃げたら二の舞いになる」。第3Q、一気に30得点した。「守りに入らず攻めていけた」と主将の村山菜々恵(3年)が声を弾ませた。縦への攻撃を積極的に仕掛けてゴール下に飛び込んだ。

 湯沢翔北(秋田)との6月の東北高校選手権決勝。第3Qで55-35と20点リードしながら、63-64と大逆転負けして優勝を逃した。高橋監督が「(山形商の指揮を)27年やっていて初めて」と話すほど、忘れもしない一戦。現チームの出発点になった。

 それ以降は有利、劣勢の展開にかかわらず村山主将が中心になって「声を出してみんなで盛り立てた」と、両チーム最多25得点の浅利愛(3年)は言う。毎年のように世代別の日本代表を輩出するが「ここ7、8年で一番弱い」と高橋監督が評するほど傑出した選手はいない。守備からリズムを作り出す持ち味に、声のスパイスを加え結束力を高めた。

 夏の全国高校総体、山形商主体で挑んだ秋の国体と初戦で涙をのんだ。3年生は高校最後の全国大会で1勝を挙げた。高橋監督は「力はないけど、高校生って1戦1戦勝つことで強くなっていく」と期待した。目標は準優勝した11年以来の4強入り。春の苦い思いを払拭(ふっしょく)して、純心女(長崎)との今日24日2回戦へ弾みをつけた。【久野朗】