同大(関西2位)が47-31で早大(関東対抗戦2位)に完勝し、11大会ぶりの4強進出を決めた。WTB松井千士(4年)のトライなど前半だけで33点を挙げて主導権を握った。10月に53歳で亡くなった平尾誠二氏を擁して3連覇を達成した84年度以来、32大会ぶりの日本一が見えた。天理大(関西1位)は慶大(関東対抗戦4位)に29-24で競り勝ち、関西勢2校の4強入りは10大会ぶり。来年1月2日の準決勝は同大と東海大(関東リーグ戦1位)、8連覇を狙う帝京大(関東対抗戦1位)と天理大が激突する。

 32年間も閉まり続ける日本一の扉へ、同大が大きく前進した。地元花園を埋めた観客8220人を前に、つかんだ17大会ぶりの早大戦勝利。涙を流す学生スタッフを見つめ、松井は心の中でつぶやいた。「何で泣いてるねん!」。天国の平尾氏を脳裏に浮かべたエースは「心を1つにして、何とか平尾さんに優勝を報告したい」と道半ばを強調した。

 平尾氏を擁して82年度から3連覇した栄光の時代から変わらぬBKの華麗な展開。そこに、近年の関西勢低迷の一因だった“激しさ”を加えた。3連続トライで19-0の前半34分。右へ大きく展開したボールを松井はライン際で受けた。50メートル5秒7のスピードで約30メートルを快走。最後はタックルを受けながら「粘って(トライを)取れた」と荒々しくインゴールに飛び込んだ。前半の5トライでけりをつけた。

 「こんなんじゃ足りない! もっとやり合えよ!」。今春、グラウンドは殺気立っていた。リオデジャネイロ五輪7人制代表の活動から戻った松井。「イケメン」と騒がれる男は外から声を張り上げた。

 同大の練習に参加するのは1カ月に数日程度。さらに代表活動を優先し、体をぶつけ合う練習を松井は免除されていた。大阪・常翔学園でともに全国制覇したロック山田有樹主将(4年)は「『普段(松井は大学に)おらんのに、何やねん』と腹立って…。見返してやろうと思いました」。

 副将だが、8月まで1度も仲間とフルメニューを消化できなかった松井は言う。「日本一になるために、思ったことを言うのが僕にできる副将の仕事。それで嫌われようがよかった」。

 試合後、早大・山下監督からは「同志社のファイトが前半の33点になった」と評された。現部員172人にとって初めてつかんだ年越し。準決勝で東海大を下せば、87年度以来の決勝の舞台に進む。通算5度目の日本一へ、平尾氏への報告はまだ早い。【松本航】

 ◆全国大学選手権での関西勢 日本一の経験は通算4度の同大だけで、最後の優勝となった84年度の3連覇達成以後はない。今回実現すれば32大会ぶり。関西勢の4強は11年度の天理大以来5大会ぶりで、2校の4強進出は06年度の京産大と大体大以来10大会ぶり。

 ◆ラグビー全国大学選手権 1964年(昭39)度に第1回開催で法大が優勝。53度目となる今季は各地区のリーグ戦を突破した14校が出場。最多優勝は早大の15度で、12度の明大が続く。最多連覇は継続中の帝京大の7が最多で、2番目は82年度から3連覇した同大。