シングルスの男子準々決勝で水谷隼(28=木下グループ)が復活の勝利をつかんだ。5日閉幕の世界選手権個人戦の銅メダリスト李尚洙(26=韓国)を4-3で撃破した。13歳の張本に敗れた世界選手権2回戦から約2週間。妻海那(みな)さん(24)の大声援を力に熱戦を制した。丹羽孝希(22)、女子の平野美宇(17)と伊藤美誠(16)は準々決勝で敗れた。

 妻にささげる勝利だった。世界選手権銅メダリストとのフルゲームの熱戦を制すると、水谷は派手なガッツポーズを繰り出した。試合中、妻海那さんの掛け声が何度も会場に響く。「よく聞こえた。ありがたかったですね」。2ゲーム先取しながら逆転される苦しい展開。青森山田高時代に知り合った元卓球選手の愛妻の声は大きな支えになった。

 世界選手権では13歳張本に完敗した。開催地ドイツまで応援に駆けつけた海那さんから「もうちょっと、わたしが声を出して応援すれば良かった」と反省の言葉をもらった。確かに妻の声は0-3と追い込まれたときに聞こえてきたが、時既に遅かった。「初めから声を出して欲しい」。その願い通り、この日は開始から「隼、頑張れ」の声がはっきりと耳に入った。

 妻の声援とともに勝利への執念も戻る。最終の第7ゲーム。10-6から4連続失点で追いつかれた。場内は静まり返ったが、張本戦の屈辱を思い出し、不安を消し去る。11-10とマッチポイントを奪うと、この日初めて逆回転サーブを選択。「失敗したら流れを失って負けていた」。リスクはあったが、相手のレシーブはネットにかかった。失いかけていた攻めの姿勢を貫けた。

 張本戦から心身ともに不調が続いた中、世界選手権の銅メダリストに勝利した意義は大きい。「不安で自信もなかったが、やっと自分らしいプレーができた」。今日18日の準決勝では世界選手権銀メダルで世界ランク2位の樊(中国)と対戦する。「最後の1点まであきらめず、会場をわかしたい」。もちろん声をからす海那さんも喜ばせるつもりだ。【田口潤】

 ◆ジャパンオープン荻村杯 年間12大会のITTF(国際卓球連盟)ワールドツアー大会の1つ。ワールドツアーはプラチナ6大会と、レギュラー6大会に分かれる。今大会は五輪、世界選手権、W杯に次ぐプラチナで、世界のトップクラスが出場。賞金総額22万ドル(約2400万円)。