乾友紀子(26)中村麻衣(28=ともに井村シンクロク)組の日本代表が、表彰台から陥落した。予選4位から“逆転”を目指した決勝で92・0572点の4位。リオ五輪銅から順位を下げる手痛い結果となった。東京五輪まで現役続行を決断したエース乾は、メダルを逃して涙した。明日18日からの同フリールーティンでは乾、中牧佳南(25)組として巻き返しを狙う。

 涙した。エース乾は4位に「とても悔しいです」と言葉を絞り出した。中村とのコンビで予選から約2点上げたが、ウクライナに0・5910点届かず。「完璧な演技ではなかったと思います」と涙をぬぐった。

 東京五輪に向けた最初の世界大会。1種目でもロシア、中国の牙城を崩し“格付け”を壊すことがテーマだった。井村ヘッドコーチは「よくやりました。(出来は)90点ぐらい」としたが、最初の五輪種目でウクライナに3位を奪われた。

 涙には理由がある。昨夏のリオ五輪でメダルを獲得して「達成感があった」と引退もよぎった。井村HCの復帰から2年半、厳しい練習を再度挑む覚悟も必要だった。「すぐに現役続行は考えられなかった」。

 迷うエースに声をかけたのは恩師だった。リオの選手村で、空港で、井村HCと話し合った。帰国3日後の8月27日には乾の電話が鳴った。井村HCから「あなたはまだ前にいける可能性がある。頂点じゃない。可能性がない子にはいわない。この2年半はラストスパート。次の4年間も同じじゃない。緩急もあるでしょ」と背中を押された。

 恩師との会話は30分近く続いた。「私の気持ちも話しました。年齢を重ねて自分と向き合う。与えられた練習に精いっぱいの状態からもっと主体的にさらに成長したい」。この電話で、東京挑戦を決めた。エースの責任感が涙につながった。

 大会はまだ3日目で5種目残っている。「まだ始まったばかり。どうなるかわからないが、ひとつひとつ、いい演技をしたい」と乾。涙を乾かした後でまたメダルに挑む。【益田一弘】

 【シンクロナイズドスイミング】

 ▽デュエット・テクニカルルーティン決勝

(1)スベトラーナ・コレスニチェンコ、アレクサンドラ・パツケビッチ(ロシア)95・0515点

(4)乾友紀子、中村麻衣(井村シンクロク)92・0572点