開始から20秒あまり。ギルマンのタックルをつぶすと下から持ち上げ、一気に場外に出した。「相手は攻撃力が強い。守らず勝負しようと思った」と2分10秒すぎには足首を取ってテークダウンを奪い、第2ピリオドでは投げからバックに回って加点。落ち着いた表情とは対照的に、ファイトは熱かった。

 10年ユース五輪で金メダルも、その後は苦しんだ。15年の全日本選手権で5位に終わり、リオ五輪出場を逃した。挫折の中、今回が3度目の世界選手権への挑戦だった。「チャンスを生かすも殺すも自分次第。過去と同じ過ちを犯したくない」。念願の世界一をかなえると「レスリングは世界選手権の優勝の方が(五輪よりも出場選手が多く)難しいと言われている。自信になる」と結果をかみしめた。

 表彰台の真ん中で目をつむって君が代を聴いた。「やめなくて良かった。(心が)折れなくて良かった」。各階級で東京五輪の実施階級の変更はあったが主戦場の57キロは残った。「20年で優勝できれば本当に大成功」。今回の成果は成功と位置付け、さらに大きなゴールを目指す。

 ◆高橋侑希(たかはし・ゆうき)1993年(平5)11月29日生まれ、三重県出身。いなべ総合学園高時代、55キロ級で09~11年高校総体3連覇。山梨学院大へ進学し、12年全日本大学選手権優勝。14年全日本選抜選手権に優勝し、世界選手権初出場で5位入賞。15年の世界選手権は9位。57キロ級で昨年の全日本選手権、今年のアジア選手権で初優勝。ALSOK所属。159センチ。