大事な平昌(ピョンチャン)冬季五輪シーズンで世界選手権王者の羽生に試練が訪れた。前日の公式練習で着氷に失敗して右足首靱帯(じんたい)を損傷し、NHK杯を欠場する最悪の事態。陣営の中では右足で踏み切る4回転のルッツ、ループを回避するプランも考えたが、ブリアン・コーチによると羽生は右足に体重をかけるだけで痛みが走る状態となり、滑れないことに涙を流したという。

 8日の非公式練習は高熱が出て休み、万全ではない中で臨んだ前日練習だった。10月のロシア杯で初めて成功した不安定な4回転ルッツに挑み、転倒して負傷するアクシデント。全治は不明だが、アスリートのけがを見てきた著名な整形外科医は映像も見て「(右足関節外側靱帯(じんたい)損傷の診断は)普通のアスリートなら1カ月くらいは休むが、我慢してやってしまうこともある」と指摘した。

 羽生が五輪代表最終選考会の全日本選手権(12月21~24日・東京)に出られなくても選考基準に世界選手権で3位以内の実績のある選手は救済措置が明記されており、五輪に間に合えば代表入りが確実。同コーチが「ゴールは2度目の五輪金メダルを勝ち取ることだ。ポジティブにならないといけない」と声をかけると、日本のエースは「イエス」と応じたという。

 同コーチが「(右)膝も引っ張られていた」と言うように、右足首や右膝は以前にも痛めたことがある部位。羽生は6種類のジャンプを全て右足で着氷するだけに負担も大きい。五輪開幕まで3カ月を切ったが、SPもフリーも過去のシーズンに演じて慣れているプログラムだけに、男子でバットン(米国)以来66年ぶりの五輪2連覇を成し遂げるためには焦らずに治して仕切り直す強い気持ちが重要になる。