フィギュアスケート男子の羽生結弦(23=ANA)に、66年ぶりの五輪連覇への道が開けた。日本スケート連盟は24日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザで行われた全日本選手権終了後、18年平昌(ピョンチャン)五輪代表9人を発表。男子はけがで全日本を欠場した羽生が選ばれた。日本連盟は羽生が団体の出場を希望した場合、本人の意向を尊重して五輪の舞台を用意する見通し。11月の負傷から試合勘が懸念される五輪王者に、男子シングル前の実戦機会をバックアップする。

 「羽生結弦」。代表発表でここにはいない名が呼ばれると会場は大歓声で包まれた。右足首の負傷からの回復が遅れ、代表選考会の全日本選手権を欠場。それでも選ばれたのは、16日に羽生側から日本連盟に「逆算して、五輪に間に合う」と連絡があったからだった。16日までに氷に乗り始め、まだジャンプなど本格的な練習には至っていないが、五輪に向け、復活の道を歩き始めた。

 羽生の意向により、4大陸選手権の代表には選ばれなかった。これで、ぶっつけ本番で五輪に臨むことになった。そこで、日本連盟が用意するのは団体特別枠。日本連盟関係者は「けがの状態によって」と前置きした上で、団体出場を本人が希望した場合には「もちろん。本人の意向もある」とショートプログラム(SP)、フリーどちらにも出られるよう最大限、尊重する方針だ。ソチ五輪金メダリストにとって、最優先は右足首のけがの回復。そのハードルを乗り越えた上で、懸案事項は試合勘だ。世界唯一、羽生だけに許された五輪連覇への挑戦を日本チームとして、支援する。

 団体は開会式の2月9日に男子SP、同12日に同フリーが行われる。男子シングルは同16日にSP、翌17日にフリー。仮に団体戦男子SPに出場すれば中6日で連覇をかけた勝負に臨める。初出場だったソチ五輪では、団体男子SPに出場し1位。五輪の雰囲気を感じ取ると同時に勢いをつけ、個人の金につなげた。また、個人戦まで中3日となるが、仮に団体フリー出場を希望した場合でも対応する見込みだ。

 今季の出場は、9月のオータム・クラシックと10月のGPロシア杯の2試合だけ。調子を上げるはずの2カ月がすでに過ぎ去り、現役最高のスケーターでもトップパフォーマンスを取り戻すことは簡単ではない。けがが回復して、五輪期間中でも個人種目の前に試合勘をつかむ機会が持てれば、不安は軽減する。最大の敵は焦り。「最後の実戦機会」というセーフティーネットを準備し、金メダリストの帰還を待つ。