男子テニスで、世界82位のダニエル太郎(25=エイブル)が、先週のイスタンブールオープンで、日本男子4人目のツアー優勝を成し遂げた。優勝後初めて、日刊スポーツの独占インタビューに答えた。

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 -ツアー優勝という言葉を聞いて

 ダニエル いやー、すごい。でも、優勝したからといって、これから自然に、楽に結果がついてくるってもんでもない。テニスは、最終的にグランドスラムに優勝しても、終わるものじゃないし。女子の全豪に優勝したウォズニアッキ(デンマーク)でさえ、今、プレーですごく苦労している。そんな感じです。

 -でも、選手は1度だけでもいいから優勝したいと夢見る

 ダニエル もちろん、うれしいですけど、これで夢がひとつかなったというわけではない。最終的に、毎日、もっと上達することと、自分の幸せが夢。勝った瞬間って、もちろんうれしいけど、その瞬間ってすごく短い。負けた時の痛さの方が全然苦しいから。勝つ瞬間、優勝する瞬間だけを夢見ていると、すごく苦しいテニス人生になってしまう。だから、グランドスラム優勝するためだけにテニスをやっていたらつまらないと思う。

 -幸せとは

 ダニエル 幸せって、すごい大きな言葉なんですけど、自分の人生のバランスをうまく取っていくこと。練習をやり過ぎない、試合も出過ぎない、ちゃんとオフを取るとか。おもしろい映画を見られた、おいしいレストランを見つけたとか。普段の生活の中で、本当にシンプルなことを楽しんでいく。そういうことを大切にしていくのが大事。それを積み重ねていくと、絶対、テニスの結果もよく出てくる。

 -いつから、そういう考えだったか

 ダニエル 小さい時から自然にあったかもしれない。でも、特に、それに1番気づいたのがリオデジャネイロのオリンピック。日本のアスリートはみんな、本当に苦しそうな顔をしている。それも、みんながニュースで見ているすごいアスリートばかり。もちろん、テニスとアマチュアスポーツ系は、大会数が違ったり、オリンピックが最高峰だったり大きく違う。でも、笑顔の人が少なくて。

 -もっと楽しんだ方がいいと

 ダニエル 僕も、人生の幸せを求めているからといって、苦しいことがないってわけじゃない。絶対に、苦しさをアクセプト(受け入れる)していかないと幸せはない。ただ、そのプロセスが最終的に幸せになってくれることを信じている。結果がついてこないと苦しいですけど、ついてこないからといって、自分がやっていることがだめなんだなということにはならない。(続く)

 

 ◆ダニエル太郎(だにえる・たろう)1993年(平5)1月27日、ニューヨーク生まれ。7歳でテニスを始め、09年プロ転向。14歳で日本からスペインに移住した。14年に日本代表デビュー。16年リオデジャネイロ五輪で3回戦に進んだ。英語、スペイン語、日本語に加え、ロシア語もマスター。父が米国人のポール・ダニエル氏。母が日本人の泰江(やすえ)さん。妹の可菜さんもテニス選手。190センチ、76キロ。