ジョコビッチの壁は厚かった。世界28位の錦織圭(28=日清食品)がジョコビッチ(セルビア)に3-6、6-3、2-6、2-6で屈し、1933年の佐藤次郎以来85年ぶりの4強入りを逃した。今後は、夏のハードコートシーズンに移り、年末の上位8人だけが出場できる最終戦ATPツアーファイナル(11月11日開幕・英ロンドン)の出場を目指す。次戦は30日開幕のシティオープン(米ワシントンDC)の予定だ。

 聖地を去る錦織は、ジョコビッチを待たなかった。ともに入場し、ともに去るのが習わしだが、悔しさは、それを許さなかった。「なかなか崩せなかった。プレー内容は悪くなかったが何かが足りない」。

 チャンスはあった。セットを分け合った第3セット2オール。相手のサーブで、3本連続のブレークポイントを握った。「あそこを取っていたら、自信もついてプレーも変わっていたかもしれない」。それを逃すと、雪崩のように4ゲームを連続で失った。

 しかし、出場10回目で自身初のベスト8進出と壁を破った。課題だったサーブも、2回戦で24本のエースを放つなど大きな武器となった。「この芝で自分のテニスを見つけ出せたことは大きな収穫。次につながる2週間だった」と確かな成長を感じ取った。

 今回の8強で、16日発表予定の最新世界ランクで20位になることが濃厚だ。次戦は昨年4強で180点を稼いだ。それが失効するだけで、その後は昨年ツアーから離脱したため失う点はない。加点のみだ。「(失効がないので)気は楽。このままのテニスができればランキングも自然と戻ってくる」と自信を漂わせた。

 今年の目標も口にした。「ツアーファイナルは、まだ目指している」。今年だけの順位を表す最終戦のレースでは10位につける。上位8人に食い込むには「自然とハードコートの結果は大事になってくる」と、得意のハードコートでの戦いを前に腕ぶした。

 今年は全豪を欠場し、1月下旬に右手首のけがからツアー下部大会に復帰。体調不良でマスターズ1大会も欠場しながら、今年だけの活躍ならトップ10だ。「かなり自信は取り戻せてきている」。その思いを胸に13日に帰国。つかの間の休息に入る。【吉松忠弘】

 ◆世界ランキングと最終戦レース 世界ランキングは発表される月曜からさかのぼり、過去52週間に出場した各大会で獲得した点数の上位18大会を合計。多い順からランキングがつく。各大会で獲得した点は、52週間を経過した後に失効。最終戦のレースは、1月1日から全選手が0点でスタート。加算のみだ。

 ◆WOWOW放送予定 13日午後7時から。同日午後8時50分から。14日午前1時から。ともにWOWOWライブ。男子シングルス準決勝ほか。生放送。