男子団体総合決勝で、連覇を狙った日本は合計253・744点で銅メダルを手にし、20年東京オリンピック(五輪)の出場権を獲得した。右足首のけがを抱えるエース内村航平(29=リンガーハット)が08年北京五輪以来となる全6種目のうち4種目出場にとどまる中、白井健三(22=日体大)ら若手の奮闘で、開催国枠を除き、全競技を通じ日本勢で初めて自力で五輪切符をつかんだ。
暫定3位で迎えた最終種目の床運動。最終演技者の白井がきっちりと着地を決めると、内村は穏やかな笑みを浮かべて手をたたいた。内村、白井、田中、萱、谷川のメンバーであん馬からスタートし、内村ら3人が好演技をそろえた。つり輪、跳馬もほぼミスのない内容でまとめて前半を終えてトップに立った。だが、後半最初の平行棒で田中の落下も響いて3位に後退。それでも鉄棒で3位をキープし、床運動でも白井らが踏ん張り、東京五輪出場という最低限の目標はクリアした。
苦しい状況を切り抜けて、東京五輪切符をつかんだ。8月に田中が右肩を負傷。さらに、9月末にはエース内村が右足首を痛めた。ロンドン、リオ五輪を経験するベテラン2人の代わりに、白井、萱、谷川の大学4年生トリオが奮闘した。内村が世界大会の団体決勝で全6種目を演技しないのは、19歳で初めて代表入りした08年北京五輪以来、10年ぶり。3種目のみだった26日の予選は「不思議な」気持ちで仲間の演技を見つめた。「新しい日本のチームの雰囲気。やっていて頼もしかった」。頼れる後輩の存在に頬を緩めていた。
若手が引っ張り、ベテランが陰で支える新しい日本の形。自らを「長老」と呼ぶ主将の内村自身がそれを求め、作った。7月末、都内の焼き肉店で初の「キング会」を開いた。お代は全て内村持ち。体操からプライベートまで話題は尽きず、午後6時から始まった宴は肉を焼き終わってからも同12時まで6時間も続いた。強豪中国を分析した上で、「このメンツなら勝てる」と全員で息巻いた。「あの会で深まった気がしました。航平さんは僕らに気を使いすぎないようにしてくれている」と萱。練習中はもちろん、それ以外の時間でも会話を重視する内村の気遣いが、団結を深め、若手の成長を促した。
東京五輪団体出場は決めたが、内村が20年に描くのは「団体も種目別も個人も(メダルを)取れる」最強チームの形だ。今大会で個人総合のメダルは白井、萱に託し、自身は11月3日の種目別鉄棒で15年大会以来の金メダルを狙う。リオで取れなかった鉄棒金メダルのリベンジへ-。内村航平の美しい体操を再び世界に証明する。【高場泉穂】
◆体操の20年東京五輪出場枠 男女ともに98人。今年の世界選手権の団体総合で3位までが獲得する。さらに来年の世界選手権で既に五輪枠を得ている国・地域を除き、上位9チームに与えられる。団体総合は1チーム4人。団体総合で逃した場合は個人総合や種目別で得られる。個人総合や種目別のW杯シリーズなどの成績上位で個人の出場枠を手にすることもできる。
◆東京五輪出場枠 実施される33競技の出場枠、予選方法は、それぞれの国際競技団体(IF)の決定による。既に開催国枠で出場を決めているのは、野球・ソフトボール、サッカー、ホッケー、バレーボール、ハンドボール、水球の団体球技だが、バスケットボールは現時点で未定。個人競技では予選で出場権が獲得できなかった場合に、開催国枠が与えられるものも多い。