ノルディックスキーのワールドカップ(W杯)ジャンプ男子で日本人初の個人総合優勝を飾った小林陵侑(22=土屋ホーム)が、30年札幌オリンピック(五輪)・パラリンピック招致のPR役に名乗りを上げた。11日、札幌市から「市長特別表彰」、北海道から「栄誉をたたえて」を授与された。18-19年シーズンは欧州勢以外では初の快挙を果たして、世界でも一気にブレークした。抜群の知名度を生かして世界に「札幌五輪」をアピールしていく。

日本の若きエースが、58年ぶりの「札幌五輪」開催へ頼もしい存在となる。札幌市が招致を目指す30年冬季五輪・パラリンピック。その実現には一丸となったPR活動が必要になるが、スキージャンプで世界の頂点に立った小林陵も、力を尽くす。「地元の五輪。こんなチャンスはない。僕もできる限り協力していきたい」と力強く誓った。

この日、札幌市役所からは「市長特別表彰」が贈られた。五輪招致に名乗りを上げている札幌市だが、7日の札幌市長選では五輪招致を公約に盛り込んだ秋元克広市長(63)が再選した。招致への方向性は継続され、今秋までに開催基本概要計画をまとめる準備を進めている。小林陵の世界的活躍に札幌市招致推進部は「札幌にトップ選手がいることは大きいし、市民の機運も高まる」と喜んだ。

抜群の知名度を生かす。今季のブレークで一気に名前が広がった。欧州のスキージャンプが盛んな地域では「Roy(ロイ)」の愛称で親しまれ、日本人が街を歩くと「コバヤシ」と呼ばれるほど。「札幌はジャンプ台が街から近い。この環境の良さは世界にアピールできると思う」。札幌市が五輪開催を目指していることは、海外のジャンプ選手にはあまり知られていない。「彼らは札幌が好きで、来たいとは言っている」。積極的に発信していくことで、選手間にも良いPRになりそうだ。

選手ファーストを掲げる札幌市にとって、海外を転戦するトップアスリートの意見は貴重なものとなる。開催が実現すれば、33歳で迎える母国での大舞台となる。招致に向けたPRだけではなく、もちろん選手として出場も目標。「11年後でも、しっかり体と気持ちをキープして活躍できればうれしい」。スキージャンプの歴史を刻む若武者は、札幌でのビッグアーチを思い描く。【西塚祐司】

◆札幌冬季五輪・パラリンピック招致活動 14年11月に上田文雄前市長が市議会で26年の開催都市に正式に立候補することを表明。17年11月に日本オリンピック委員会(JOC)の常務理事会で国内候補都市とし、立候補する検討を固めた。しかし、18年9月の胆振東部地震の影響で招致活動継続が難しいとの判断から、招致を26年大会から30年大会へ変更し国際オリンピック委員会(IOC)に伝えた。