7月1日に、テニスの4大大会、ウィンブルドンが英国ロンドン郊外で開幕する。テニスの聖地とうたわれるセンターコートを舞台とした大会は、最も日本になじみ深い。その開幕を控え、3回にわたりウィンブルドンについて連載する。第2回は、「錦織圭の展望」だ。

世界7位の錦織圭(29=日清食品)にとって、最もやっかいなコートが芝だ。昨年、ウィンブルドン本戦10度目の挑戦で、ようやく自身初のベスト8に進出した。4大大会で自身最も遅い8強入りだった。最後に残された4回戦の壁を突破し、日本男子初の4大大会すべて8強以上の快挙を達成した。

18歳5カ月の日本男子最年少で4大大会本戦にデビューしたのが、08年ウィンブルドンだった。記念すべき初戦。対戦相手は53位のジケル(フランス)と、十分に勝てる相手だった。第1セットは奪ったが、腹筋を痛め、セットを分け合った第3セットに棄権した。

その時から、芝とは相性が良くない。15年から3年連続、ドイツの前哨戦でケガ。故障を抱えたままウィンブルドンに入り、力尽きる状態が続いた。錦織自身によると、芝コートは「違う筋肉を使うので、そこに負荷がかかり痛めてしまう」という。ハード、クレー(土)、芝のコートの中で、芝は最も低い勝率6割1分だ。

その負の連鎖を断ち切ったのが18年だった。今年は、全仏で痛めた右上腕部の疲れが長引き、前哨戦を欠場。芝の公式戦は、このウィンブルドンが一発勝負になる。非公式戦としては、26日に、同28位のプイユ(フランス)と対戦しストレート勝ちを収めた。

29日に行われた会見では、芝に対して「嫌いというイメージは全くなくなった」。右上腕も「もう大丈夫」と、練習試合でもナダル(スペイン)と互角に打ち合った。初戦の相手は、予選勝者のモンテイロ(ブラジル)だ。対戦はないが、よほどのことがない限り、錦織優位は動かない。

2、3回戦も、やっかいな相手が予想はされるが、それほど脅威ではないだろう。4回戦の相手に、誰が上がってくるのかは予想は難しい。最もランクが高いのはイスナー(米国)だが、左足のケガで3月のマイアミオープン以降、欠場中。今大会が復帰戦になるため未知数だ。

対抗で同34位のシュトルフ(ドイツ)、元トップ10のベルディハ(チェコ)、今週優勝のフリッツ(米国)らも見逃せない。いずれにせよ、錦織は4回戦までに、できるだけ接戦をせずに体力温存で戦うことだ。そして、4回戦突破で、できれば万全な形で準々決勝でフェデラー(スイス)と戦いたい。

◆ウィンブルドンは、WOWOWで7月1日~14日、連日生中継。WOWOWメンバーズオンデマンドでも配信。