世界2位の上地結衣(25=三井住友銀行)が、18年全仏以来の4大大会シングルス優勝を惜しくも逃した。

今年、4大大会シングルス全勝で、同1位のデフロート(オランダ)に6-4、1-6、4-6のフルセットで逆転負け。しかし、「今までのスタイルなら、ここまで競れなかった」と、新たに取り入れた速攻攻撃テニスに手応えを感じていた。

第1セットは「自分の集中力が高かった。いい形で攻められた」と、その攻撃力で逃げ切った。しかし、第2セットになると、相手が遅攻に転じた。緩い山なりの球を多用し、ペースを落とした。「それに気がつかなかった。自分の球が悪いので、点を取れないと思っていた」。その緩い球につきあってしまった。

最終セット、相手の緩い球を、ライジングでとらえ、攻撃テニスに転じた。4オールまで競ったが、そこから2ゲームを連取され力尽きた。攻撃力では、まだ相手の方が上だった。それでも十分に見応えのある決勝だった。

女子の車いすテニスが、レベルアップした区切りの試合だったかもしれない。これまで、直線的な弾道で、決定打を量産する一般のプレーに近いスタイルを定着できたのはデフロートだけ。何度も世界1位を経験した上地でさえ、安定した緩いストロークでミスを抑え、展開力で相手のミスを誘うスタイルだった。

しかし、上地が攻撃的なスタイルを取り込んだことで、デフロートとの試合は、一気にラリーのレベルが上がった。ミスの少ない攻撃的な打ち合いは、これまでの女子の車いすテニスに、あまり見られなかったものだ。また、そこに女子車いすテニスが持ち味とする緩球が混じり、戦略の幅が広がった。

これで、対戦成績は14勝14敗の五分となった。女子の車いすテニス界、最大のライバルの対戦は、これから20年東京パラリンピックまで、高いレベルでの試合が期待される。

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