バレーボール女子日本代表に新たな戦力が芽を出した。19歳、石川真佑(東レ)。男子代表のエース、石川祐希の妹で、今春、高校バレー界の強豪・下北沢成徳(東京)を卒業したばかりの“ルーキー”だ。

15日に横浜アリーナで行われたW杯第2戦。世界ランキング6位の日本は同5位のロシアにフルセットの2-3(11-25、25-23、27-25、19-25、7-15)で惜敗して開幕2連勝を逃したが、二転三転のクロスゲームで石川は輝きを放った。

「少しでもチームの勢いになるようにと思ってコートに入った。ロシアのブロックは高いので、コースを狙ったり、ブロックを利用したりすることを考えていた」

出番は第1セット中盤にやってきた。エースの古賀が連続シャットアウトされるなど、4-13とリードされた場面。中田久美監督(54)はその古賀に代えて石川をコートに送り出した。

14日のドミニカ共和国戦で4度ピンチサーバーで出場したが、得点はなかった。待望の代表初得点は10-23からだった。セッター佐藤のやわらかいトスをレフトからたたいてブロックアウト。平均身長で11センチ上回るロシアの高さに圧倒されてセットは失ったが、173センチのアタッカーはその後も日本に力と勇気を与え続けた。

第2セット、19-19の勝負どころで2本続けてレフトからクロスを打ち抜いた。第3セットの23-21からはブロックにつかまり、スパイクアウトして追いつかれたが、それでも佐藤は石川を使った。三度目の正直で強打をロシアコートにたたきつけて流れを放さなかった。

レフト、ライト、そしてバックアタック。ロシア高い壁の間を打ち抜いたかと思えばブロックアウトを誘う。サービスエース1本を含む20得点。今大会が代表デビューの石川のプレーが先輩たちを鼓舞し、一方的になりかねなかった展開に歯止めをかけた。

第2、3セットを連取して1度はリードしながらの再逆転負けに中田監督は「リーダーがいない。ああいう流れでチームを引っ張る、リードする、背負える選手がいない」と険しい表情だった。だた、石川に関しては「途中出場で何度か流れを変えてくれた。そこは評価している」と合格点を出した。

今年1月。石川は下北沢成徳の主将、エースとして全国高校選抜(春高バレー)で高校3冠を目指しながら準決勝敗退。こみ上げる涙をこらえながら「この悔しさを忘れずに、次のステージで頑張りたい」と話していた。当時の中田監督の石川への評価は「彼女がどこを意識してプレーするのか。世界を相手に戦うのであれば、独自の武器を身につけてほしい」と厳しいものだった。

しかし、石川は実力でその評価を覆した。今年7月のU20世界選手権(メキシコ)、若手のB代表で臨んだ8月のアジア選手権(ソウル)でともに優勝の原動力になり、大会MVPに輝いた。そのプレーを見た中田監督は「高いブロックに対し、相手のブロックを見て、打てる技術を持っている。競った場面で絶対、気持ち的に負けない強さがある。スパイク決定力はチームでも1、2」とW杯メンバーに抜てきした。

中田監督が日本の課題の1つとして挙げるのが「アタックの点数」。古賀、石井、黒後、新鍋らアタッカー陣の得点力をいかに高めていくかだ。そこに石川という新たなカードが加わった。「代表に合流したばかり。連戦で疲れもあるので、体調をみながら慎重に使っていきたい」と同監督は大切に新エース候補を育成していく方針だ。

「2、3セットまでは良かったんですが、その後ロシアに対応されてブロックされることもあった。これからは試合の中で修正できるようにしたい」

石川は20得点の喜びよりも反省点を挙げてニコリともしなかった。そんな19歳が少しだけ表情を崩した。日本協会や今大会のデータで「173」「171」と異なる身長について問われた時だった。

「できれば『3』にしてもらえますか。『3』の方がいいです、ハイ」

【小堀泰男】