先週のNHK杯で東京五輪出場を決めた男女4人が“新コース”に苦しんだ。男子C-1(カナディアンシングル)の羽根田卓也(32=ミキハウス)、女子C-1の佐藤彩乃(22=秋田病理組織細胞診研究センター)、男子K-1(カヤックシングル)の足立和也(29=山口県体育協会)はいずれも準決勝で敗退。女子C-1の矢沢亜季(27=昭和飛行機工業)が決勝に進出したが、8位に終わった。

NHK杯では、9月の世界選手権から間隔が短いこともあり、難度の低いコースにしていた。今大会は距離は同じでゲートを5本追加。サイドの障害物を1個増やして流れを変えるなど、スピードだけでなく技術が求められるコースに変化。予選からもさらに変化しており、ゲートの不通過や接触などのペナルティーを受ける選手が続出した。

後半にバランスを崩すなど、納得のレースができなかった羽根田は「コースが段違いに難しくなった。(各ゲートごとに)コンマ何秒かずつでも削っていかないと」と反省を述べた。佐藤は「今まで経験した中で3本の指に入るくらい。まだ慣れていない。これからしっかりやっていかないと」と語り、矢沢も「1つのミスが大きなタイムロスになる。ゲートを落とさないような乱取りをしないと」と危機感を募らせた。

組織委員会の徳永覚カヌースラローム種別マネジャー(70)は「今後も少しは変えていくが、基本的には五輪本番に近いコース。いろいろ変えたら練習させている意味がない」と話した。同会場は今後組織委員会が管理し、年60日選手に練習会場として全選手に提供する。日本選手4人のメリットは経費もかけずに行けることだが、足立以外の3人は海外を拠点としており、外国人選手とそれほど差はない。

男子C-1で優勝したトーマス(スイス)は五輪会場での優勝に「パドリングが楽しくなる仕掛けがしてあったね。このコースは気に入った」と語れば、女子K-1で3位のルカ(ニュージーランド)も「見た目はリオ五輪のコースに似ているけど、うねりや流れ方は少し違うかな。落差はあまりない」。すでにコース特性を理解し、クリアした外国選手もいる。

この日の日本人最高は先週五輪出場を逃した(24=ANA Cargo)だった。決勝では不通過を取られながらも7位。24年パリ五輪への意志を自分で確かめるために出場し、決勝に残った。本番で出られないコースを見ながら「めっちゃ出たかったですよ。でもこれでやっぱりカヌーが楽しいってことが分かりました。(同じ種目の)佐藤彩乃さんには頑張って欲しい。一緒に戦ってきた同士ですから」と悔しさも見せず、いつもの笑顔で語った。残り10カ月、八木の思いも背負いながら、4人は難コースを克服し、表彰台を狙う。【松熊洋介】