ショートプログラム(SP)2位で2連覇を狙った紀平梨花(17=関大KFSC)がフリー2位の151・95点を記録し、今季自己最高の合計231・84点で2位となった。

4回転サルコー挑戦は見送ったが、2本のトリプルアクセル(3回転半)を成功。2連覇が懸かるGPファイナル(12月5日開幕、イタリア・トリノ)出場を確定させた。SP首位のコストルナヤ(ロシア)が合計240・00点で優勝。同5位山下真瑚(愛知・中京大中京高)が5位、同8位横井ゆは菜(中京大)は4位だった。

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混雑するリンク裏の取材エリアで、紀平は自分の次に滑ったコストルナヤの得点を伝え聞いた。「うわぁ、すごい」。柔和な表情には、納得感がにじんだ。最優先したファイナル出場権を喜びながら「自分の中でいい演技ができた。少しミスがあったけれど、それでも1位にはなれなかったと思う。すごく厳しい戦いだった」と冷静に分析した。

実戦初投入を目指した4回転サルコーは、会場入り後に回避を選んだ。浜田コーチからかけられた「トリプル(3回転)に持っていったら?」の声に「80%トリプルでいこうと思っていた」という心が定まった。冒頭を3回転サルコーに変更し、2本の3回転半は「いいジャンプを跳べた」と両方に加点が付いた。9月に左足首を痛めた影響で、基礎点が3回転で2番目に高いルッツは跳ばない。世界最高峰の舞台に立つことに集中し、まとめあげた演技に右拳を振り下ろした。

周囲の視線は常に気にしない。いつも自分で「22年北京五輪金メダル」と口にしてきた。18年平昌五輪には年齢制限により、約3週間の差で届かず、19歳となる22年を目指す運命だった。今ほど注目を浴びていないジュニア時代、母実香さん(48)からはことある事に同じ言葉を伝えられた。

「どんな人が金メダルを取れると思う? こんな風にチャンスをもらえる人は、めったにいないと思う」

4歳の時、神戸市内のスケート教室で滑る楽しさを知った。3万円のスケート靴を買ってもらい「すごく滑りやすい」とのめり込んだ。平昌五輪の代表2枠が懸かった17年全日本選手権。1つのミスで明暗が分かれる大会に出場し、先輩スケーターたちの勇姿を見て、自宅で「壮絶だった…」と漏らした。ネット高校に進学し、スケートに全てをささげる生活を送る。「実はあんまり試合を楽しめない人。いろいろな方が見てくださっているので、その期待に応えたい」。努力が判断される場面は3年後だと自覚し、最善を尽くす。

世界の実力者6人が集うファイナルは、現在地の確認にふさわしい舞台。コストルナヤ、ザギトワと並んだ壇上で「1位を狙っていきたいと強く思った」と宣言し「4回転を仕上げられたら」と誓った。本当の勝負は先にある。【松本航】